【雑誌紹介】 非暴力のイエスに従う 『福音と世界』8月号

 特集「戦争の時代に平和を問う」。徳田信(フェリス女学院大学教員・宗教主事)が、ジョン・ハワード・ヨーダーとスタンリー・ハワーワスの神学に基づいて「足元から始める平和」を考察する。

 「ヨーダーやハワーワスの特徴は、特殊にキリスト教的な立ち位置から平和を捉えるところにあります。それは、社会科学による一般的な平和理解をそのまま受け入れて、それを進めるためにキリスト教の要素を活用するのではなく、キリスト教に特有の視点で平和を再解釈するよう促します。この視点では、平和は非暴力で十字架に向かったイエスへの信従の結果として現われるものであり、それは同じ志を持つ人々の共同体の中での生活によって認識可能となります。これはキリスト教の外部に対しては教会共同体への参加の招きであり、内部に対しては教会がキリスト教特有の確信に基づいて生きることを確認する促しとなります」

 「キリスト教界は多様なグループに分かれており、それらの違いは文化・社会的な要因に帰される場合もあれば、深い信仰的探究ゆえの場合もあります。そして、それらの違いがしばしば対立を引き起こしてきたことも確かです。特に一九六〇年代以降、伝道と教会形成を重視するグループと、平和や人権などの社会的課題に焦点を当てるグループとの間の方向性の違いが鮮明になりました。教界内のこの種の不一致は、平和と伝道の両方の努力を妨げてきた側面があります。もし平和へのキリスト教独自の訴えと教界内の和解を同時に達成できれば、伝道のための障壁を一つ解消できるでしょう」

 「教会が非暴力と和解の共同体性を育むことで、その存在は一般社会から一線を画すことになり、『キリストの体』としてイエスの姿を具現化します。平和の重要性は実際に平和を生きる非暴力の姿を通じて伝えられ、また、福音の本質である和解が目に見えて現れた教会・教界であれば自然と人々が集まるでしょう。こうして伝道と平和の課題は、同時かつ不可分に取り組まれることになります。それは声明文の発出など従来の平和活動を否定するものではありません。また、歴史神学的な視野をもって自由や人権を重んじる社会を構想する意義を否定するものでもありません。しかし事柄の順序として、大きなところよりも小さなところ、足元での非暴力と和解の共同体性の涵養こそが先行するということです」

【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】

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