【書評】 『贈りもの 晴佐久昌英クリスマス説教集』 晴佐久昌英

 カトリックの晴佐久昌英神父によるクリスマス説教集。著者の説教に、美辞麗句はない。日々、生活に困窮している人々や生きづらさを抱える人々と関わり続ける晴佐久神父の心と生き方が反映されている。それゆえに心に響くものがある。

 近年の社会では、技術革新が進む一方で生きづらさを抱える人が増加傾向にあり、貧困格差が大きくなっているのは多くの人にとって周知の事実である。また、さまざまな要因で社会とのつながりから途切れている人は多い。しかし、そうした孤立や不安を抱えるようになった人々に向けて、「わたしたちみんなで幸せになろうよ」と語る著者の言葉は、暗闇を灯(とも)す光に思える。

 ある日、精神科に入院していた一人の人が著者のもとを訪れる。身よりもなく頼るところがないその人は、わらにもすがる思いで教会の門をたたく。著者は、その人の宿泊代や食品を支援し、本人の希望通り、教会の近くに住めるように支えた。その人は、その時の出来事をこのように振り返る。「見ず知らずの人をそこまで助けてくれる教会というところに感銘を受けて、これこそキリスト様の愛だ」

 イエス・キリストはすべての人を救うためにこの世界に生まれたと聖書には書かれている。本書では、クリスマスはそのイエスの誕生を祝う日であると同時に、文字通り暗闇に置かれているすべての人々に光が灯る日でもあることを示している。そして、すべての人に光がすでに灯されているという事実を体現するのは、人の役割であるということに気づかされる。すなわちクリスマスを体現するのは、きれいなイルミネーションや祈り、美しい賛美だけではない。イエスが肉体をもってこの世に来られたように、同じ弱さを持った者同士として一人ひとりと関わり続ける実存的な関係である。

 クリスマスの日。街は多くの明かりで輝き、きれいで美しい歌声や曲で満ちている。しかし、社会の見方を少し変えてみると、暗い場所で一人たたずむ人がおり、孤独と寂しさに生きている人が多くいることに気がつく。

 「実はあなた自身が、この世界に贈られた、尊い贈りものだ」

 本書で語る著者の説教と生き方を目の当たりにする時、手に取る人の心に光が差し込み、すべての人に届くイエスの温かさと小さな光がすでに届いていると体験することができる。そして、読み終えた時、すでに起きているこのクリスマスという事実を体現するために、私たちにできることはないかと問われていく。

【1,320円(本体1,200円+税)】
【キリスト新聞社】978-4873958262

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