【書評】 『傷によって共に生きる 北口沙弥香牧師受按5周年記念説教集』 北口沙弥香

 私は説教について良し悪しを言える立場ではありません。ですが、説教をする立場の人として、これだけは言えることがあります。それは、日曜日の礼拝の中で与えられた聖書箇所について、1週間で一番向き合っているのが説教者であるということです。聖書を説き明かす時、客観的に話をしようとしても、その言葉にはどうしても説教者の1週間の歩みと心の中が見えてきます。

 著者と私はX(旧Twitter)で知り合いました。いつも独創的な視点からのつぶやきを楽しく拝見させていただいていました。まだ対面でお目にかかったことはありませんが、彼女がどんな説教を語っているのか興味を持っていました。だからこそこのたび、受按5年を記念して、説教集を刊行されたことを嬉しく思います。

 この説教集は、神学生のころからの説教を抜粋して編集してあります。回を重ねるごとに、どんどんオリジナリティの強いものに進化している過程を感じ取ることができます。 集められた説教は、牧師になるまでの心の葛藤、教会での牧会、介護の仕事、しばしば通っているラーメン屋をはじめとする食堂、ケアを受けている病院、さまざまな人たちと出会い、一緒に生きようとしながら、聖書に向き合って生まれたメッセージです。

 これらの説教には、「傷」という言葉がたくさん出てきます。私はその「傷」の全てを知る人間ではありませんが、北口さんはこれまで幾度となく傷ついて生きてきた人であり、自分自身もたくさんの人を傷つけながら生きてきたことを知っている人なのだと推察します。だからこそ、さまざまな人の「傷」に敏感であり、そこから生み出された「優しさ」が言葉から見えてくるのです。

 そんな1人の説教者の説教集を読んでいただき、著者と出会っていただきたいと思うのです。今後の活躍を心からお祈りいたします。

(評者・本竜 晋=日本基督教団相生教会牧師)

北口沙弥香
 きたぐち・さやか 1984年北海道北見市生まれ。2003年札幌大学法学部法学科に入学。大学入学直後にキリスト教と出会い、大学4年の2006年イースターに日本キリスト教団真駒内教会にて受洗。07年に大学卒業後、札幌の地で4年間フリーター生活を送る。11年農村伝道神学校に入学、15年卒業。卒業後、日本基督教団なか伝道所に担任教師として赴任。同時に町田市の「重度訪問介護」(身体障碍者)の訪問介護事業所に就職し、牧師とヘルパーの二足のわらじの生活を始める。18年日本基督教団藤沢ベテル伝道所担任教師となる。同年6月日本基督教団神奈川教区総会にて按手礼受領。19年介護福祉士登録。22年5月より日本基督教団愛川伝道所主任担任教師就任。引き続き「ヘルパーやってる牧師」としての実践を続けながら牧会に励んでいる。リベラルクリスチャン情報局「イクトゥス・ラボ」メンバー。

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