【雑誌紹介】 未来に負の遺産を残す大人たち 『福音と世界』1月号
特集「原子力と再生可能エネルギー」。会津放射能情報センター代表、子ども脱被ばく裁判の会共同代表の片岡輝美(日本基督教団若松栄町教会員)が「私のあとに続くいのちのために――福島からのメッセージ」と題して訴える。
「最近、私は特に気になっていることがあります。それは私たちを『風評加害者』と揶揄する声が大きくなっていることです。これは今に始まったことではなく、福島県や近隣から避難した者が発言すると『歩く風評加害者』と言われてきました。そして最近では福島第一原発から海洋放出されるのは『処理水』ではなく『放射能汚染水』だと抗議する私たちが『風評被害を作る加害者』だというのです」
「いのちや暮らしが脅かされ人権が蔑ろにされ、人格や出自を差別されていることに怒りをもって抗議する人々を嘲笑、揶揄する言動が急速にこの社会に蔓延していることが、とても恐ろしいと感じています」
「社会には必ず不条理に苦しむ人々がいて、そこにこそ、社会が認めなくてはならない過ちや取るべき責任がある。そして何よりそれが国策の負わせた不条理なら、当然、国は謝罪しなくてはならない。でも、この国は自分たちと歩調を合わせて明るく前向きにがんばる人を善として、メディアを使って大衆の耳目を集めさせます。そうなると、国やメディア、大衆を後ろ盾とした人々は怖いもの知らずで、悲しみ怒る人を嘲るようになります。涙を流して必死に抗議すればするほどますます嘲笑されるのは個人の想像力や良心の欠如だけでなく、そう仕向けるこの国の『質(たち)の悪さ』にあると思うのです。責任も取らず謝罪もせず、全てを誤魔化しはぐらかして、原発核事故などなかったことにしようとするこの国の有り様は本当に醜悪です」
「あの時起きていたことを、私たちは忘れてはいけない、いや、もっと知らなくてはいけないと思います。それは原子力核災害によって何が起きたのかを知り、誰の責任なのかを見抜くことによってしか、次の災害を防ぐことができないと考えるからです。ここに私たち大人の責任があります。未来の世代に大きな負の遺産を残してしまう私たちの責任も、うやむやにしてはいけないのです」
【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】