【雑誌紹介】 対話は平和構築の礎 『福音宣教』2月号

 月間テーマ「互いに深く聞き、考え、対話する」。立教大学文学部教授で日本学術会議会員の河野哲也が「哲学対話の意義――暴力の回避と沈黙」と題して述べる。

 「私は、この十数年間、さまざまな年齢の、さまざまな地域の人たちやお子さんたちと、哲学的なテーマについて対話する『哲学対話』と呼ばれる活動をしてまいりました。哲学対話とは、意見や世界観が大きく異なる、あるいは対立する相手を他者として承認し、互いの意見を傾聴しながらも、それらを批判的に検討して、内省的な思考を深めて、創造的な解決に向けて議論することです」

 「哲学対話は人々をつなげる効果を持ちますが、これは、哲学対話においては、何よりも時間をゆっくり使って、相手の話を傾聴すること、そして自分を変えることに重きを置いているからだと思います。『急いで、一方的に話して、自分を変えることがない』。これが現代社会の私たちの姿ではないでしょうか。私たちがこうした姿勢を改めない限り、本当に重要な良い変化を社会にもたらすことはできないでしょう」

 「しかし、私がコミュニティ作り以上に注目したいのは、対話は平和構築の礎であり、対話の仕方を身につけた人は暴力を抑制するようになるという事実です」

 「人の争いは、意外にも、心理的な理由から生まれるものです。自分は認められていない、低く見られている、自分が信じている価値が貶められていると思うことから、人は自尊心を失い、それを取り戻そうとして相手に攻撃的になります。その攻撃が戦争や紛争にすらなります。対立する人々の間でも、相互に相手が何を大事にしているのか、相手が何を心の支えにしているのか、といった事柄について互いに傾聴する機会が設けられるなら、暴力的な紛争は収まっていくはずです」

 「子どもたちの世代には、いまの大人たちが行っている愚かな争いを避ける知恵をもって欲しいと願わずにはいられません。そのためには、子どもたちが身近なところで、対話による諍(いさか)いの解決を経験しておく必要があります。対話とは、年齢やジェンダー、社会的地位や価値観を超えて、一人の人間として、同じく一人の人間である相手とフラットに話し合うことです。上下の階層や立場を超えて話し合いができないような社会は、おそらく暴力や報復に訴えることが多いはずです。長く時間がかかるように思える教育は、じつは平和構築の最も早い解決法なのかもしれません。これは、今の世界が最も必要としていることであろうと思います」

【660円(本体600円+税)】
【オリエンス宗教研究所】

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