【書評】 『イエスの示す道 受難節の黙想』 ヘンリ・ナウエン 著/友川 榮 編訳

 本書はオランダ出身のカトリック司祭でありハーバード大学教授を務めたヘンリ・ナウエンの引用資料を追加するなど、翻訳全体に手を加えた約20年振りの新装版として出版された。初版は8名の訳者によって世に出されたが、訳者の「あとがき」には翻訳の過程で触れたイエス・キリストの十字架と復活に示された神の深い愛に基づくナウエンの信仰によって各人の信仰が見つめ直されたことが記されている。ナウエンによる黙想を読み祈ることで、イエスが示された道をイエスと共に歩んでいる自分の姿に改めて気づかされたのである。ナウエンはスピリチュアリティに関して研究しているが、その著作はカトリック、プロテスタントの区別なく世界中の人々に愛読され日本でも多くの訳書が出版されている。どれもが平易な文体でありながら表現し難い人間の生の根底に迫る鋭い感性と、愛なる神への信仰に基づくメッセージによって信仰生活の精髄に触れられるのが本書の特徴である。

 本書の構成は受難節にふさわしい聖句に続き黙想が展開され、祈りの言葉で締め括られる。ナウエンの黙想では、「受難節にあって如何に生きるのか」との問いに明快に答えている。そして続く祈りの言葉が読者自身の祈りとして受け止められることで、受難節を主と特別な形で過ごす時であるとするナウエンの言葉によって、十字架の死を乗り越え最後の勝利へと進む主の道に従うよう呼びかけられていることに気付かされる。そこでは受難節の過ごし方として聖霊の働きを信じること、祈ること、そして望みつつ忍耐して待つことが肝要であるとしているが、そうした生き方に困難を覚える全ての人々に対して、「イエスが共に歩んでおられる。イースターへと続く希望の光があなたの行く手を照らしている」と福音を告知することで黙想が閉じられている。

 読者の誰もが持つ「如何に生きるのか」との問いに明快に答えている本書は、受難節を過ごすすべての人々にとって必読の書である。

(評者・神保 望=日本聖書神学校教授・校長)

【1,870円(本体1,700円+税)】
【ヨベル】978-4-909871-87-9 C0016

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