【雑誌紹介】 子どもは大人の欲望を映す鏡 『福音と世界』9月号

 特集「子どもとキリスト教 地域社会と教会」。日本基督教団足利教会牧師・足利みどり幼稚園園長の望月麻生が「わたしたちは子どもをどう捉えるのか」と題して述べる。

 「二〇二三年四月に設立されたこども家庭庁。『こどもがまんなか』をテーマに政策を進めると言う。『こどもがまんなかの社会を実現するために』、旧来大人が中心であった社会を作りかえていくとうたう。そうなっていけば大変喜ばしい。しかしその『こども』にすべての子どもが含まれるわけでもなさそうだと、私は悲しい見方をせざるを得ない。『こどもがまんなか』どころか、ますます社会の片隅に追いやられていきかねない子どもがいる。『こどもをまんなか』に置くふりをして、ますます一部の大人に都合のいい社会を作ろうとしてはいないか、とも懸念する」

 「日本に生まれ育つ子どもに期待されているもの、求められていること、それはしばしば『のびのびとその子らしく育つこと』だと言われる。しかし本音は本当にそうだろうか。『のびのび』はどこの幼児施設の入園案内でも使われている言葉であるにもかかわらず、人口一三万人の地方都市で幼稚園の園長を務めている私は、しばしば現実との乖離を突きつけられるのである」

 「ある会合でのこと。それは市会議員と幼稚園や認定こども園の園長との意見交換会だった。会合自体は和やかなものであったが、司会をしていた某園の園長が一言。『私たちの使命は、この町で税金を納められる子どもを育てることであります』。会場は、万雷の拍手。少なくとも、私と共に円卓を囲んでいた市会議員と他園の園長は何の疑問や違和感も持たないようだった」

 「『立派な納税者にするため子どもを育てる』という類の発言は、この例に留まらない。ある人は児童養護施設の評議員会で、またある人は子育ての講演会で、似たような発言に出会ったという。社会から必要とされているのは、『社会の役に立つ子ども』『国に貢献してくれる子ども』。そのような発言に出会ったとき、皆さんはどうお考えになるだろうか」

 「実に、子どもは大人の欲望を映す鏡でもある。子どもそのものよりも、子どもが自分にもたらしてくれるものを期待し求めているのであれば、それは大変残念なことである」

【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】

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