【雑誌紹介】 子どもの傷つきを「追体験」 『季刊・教師の友』2025年4,5,6月号

東洋英和女学院中学部・高等部の「相談室(カウンセリングルーム)」でスクールカウンセラーとして活動する塩谷洋子(臨床心理士・公認心理師)による新連載「子どもとの出逢いをとおして」。初回のテーマは「なぜ、ダメ出しするの?」。
「相談室に来る子どもたちのなかには、数分で終わるような簡単なゲーム類を『いっしょにやろう』と、私との対戦を挑んでくる子も多くいます。私はそれを受けて立つのですが、私が遠慮なく勝つと『おとなげない』と言い、負けると『弱いね、ダメだね』とどっちにしてもダメ出ししてきます。あまりに悔しくて私の方から『もう一回』と挑むこともあるのですが、子どもたちはとにかく私が悪戦苦闘する姿を見てすごく嬉しそうです」
「子どもたちは、悪意や意地悪な気持ちによってダメ出しをしている感じではありません。ダメ出しをすることで心の底から幸せを感じているようです。確かにおとなを打ち負かす機会なんてそうないでしょうから、いい気分なのでしょうか? あるいはただの反抗なのでしょうか?」
「もちろんそうした一面もあるのでしょうが、私はそれだけで片づけてはならないものもあると時々、感じます。それはダメ出しする時の様子から『この子自身が他でダメ出しされているのかも』と思えることがあるからです。いじめや虐待の連鎖の構造と似ているかもしれません。力では敵いそうにない相手から傷つけられた時の悔しさ、悲しみ、怒りなどを他にぶつけてしまうという構造です。私にダメ出ししてくる子どもたちのすべてがそうだとは思いませんが、なかには誰かを傷つけずにはいられない、そうでもしなければ自分が立っていられないような子どももいるのかな、と思うのです」
「ダメ出しされて私も傷つくことがあります。時には、あまりにも真っ当なダメ出しにオロオロするのですが、これは子どもたちの傷つきの『追体験』であり、その傷の一部を私もリアルに体験させてもらっているとも言えることです。『弱いね、ダメだね』はこの子自身が他のどこかで言われていること、あるいは、言われているように感じて自分を責めていることばかもしれません」
【本体1,527円+税】
【日本キリスト教団出版局】