【雑誌紹介】 神のようにふるまう「正統」 『福音と世界』4月号

 昨年8月に逝去した新約聖書学者の荒井献を追悼する特集「荒井献とその時代」。「人が神にならないために――荒井献先生を追慕し」と題し、上村静(尚絅学院大学教授)が荒井から受けた影響を振り返る。

 「遠藤の『死海のほとり』を介して荒井先生と出会ってから四〇年近い月日が流れた。『死海文書』(ぷねうま舎、二〇一八年~)の翻訳に携わることになったのも不思議なご縁である。先生はグノーシス主義の研究で博士の学位を取られたが、先生のグノーシス研究の根底には『正統』と『異端』に関する問題意識があったように思う。何をもって『正統』を任じ、何をもって他者に『異端』のレッテルを貼るのか。今日のキリスト教は『正統』の流れに属するが、まさにその『正統』という自任をもって他者を裁いてきた歴史がある」

 「ヘブライ語聖書には被造物である人は『神のように』はなれないとする創造論とこの世が終わった後には『義人』は『神のように』永遠に生きることができるとする終末論があり、後者は二元論的世界観に由来する。私見では、イエスは前者の創造論の系譜に属するが、キリスト教は後者の終末論の系譜に属する」

 「『正統』を自任するキリスト教はこの世の終わりを待つことなく、『神のように』ふるまっているように見える。荒井先生の『正統』批判、キリスト教批判、国家批判は、まさに人が神になっていることへの批判であった。『人が神にならないために』自己の属するキリスト教、社会、国家を批判すること、自己を批判することに真摯に向き合わねばならない。振り返ってみれば、私が先生から最も深く学んだことはこれに尽きるように思う」

【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】

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