【書評】 『聖書のなかの残念な人たち』 MARO

 X(旧Twitter)で約11万人にフォローされる「上馬キリスト教会」の中の人として、数々の「ゆるくて親しみやすい」キリスト教書を上梓してきた著者の、8冊目となる新刊。今回は、2016年の『ざんねんないきもの事典』以来、さまざまな分野で開拓されてきた「残念さ」をテーマに深掘りする。 

 人類の犯してきた残念なエピソードという視点で見れば、聖書は「やらかし」「しくじり」「こじらせ」のオンパレード。都合のいい意見だけを聞く人(レハブアム)、目先の利害に囚われて大局が見えない人(ユダ)、ダメだと言われるとやりたくなる人(アダムとエバ)、落ち込んでいる人に正論で説教する人(ヨブの友人たち)、部下の仕事にしゃしゃり出てくる上司(ウジヤ)――いずれも現代にも通じるような醜態ばかりで、2000年以上変わらない人間の愚かさに向き合うことになる。それらは当然、私たち自身の姿にも重なるが、「残念だからこそ救われ、人からも神様からも愛される」という一貫したメッセージに救われる。

 特に「第4章 格言から見る残念な人」は、「何者かにならなくては」「正しくあり続けなければ」「人の役に立たなければ」という強迫観念にさいなまれる真面目なクリスチャンにも響く。

 ゆるいイラストに癒やされ、肩の力を抜いて読み進めるうちに、「たとえ失敗しても大丈夫」と思えてくる。福音の本質とは、まさにそういうことかもしれない。

【1,980円(本体1,800円+税)】
【笠間書院】978-4305710451

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