【雑誌紹介】 「キリスト教ってこの程度?」 『福音と世界』9月号

石田学(日本ナザレン教団無任所牧師・日本ナザレン神学校講師)による連載「わたしたちキリスト者は天皇制をどう考えるべきか」の最終回。
「『どうすれば日本で伝道が進むか』という問いに簡単な答えを出すことができないのは明らかです。もし仮に簡単で効果的な方法があるとすれば、それはキリスト教を『プチ宗教』に変質させることです。『信じれば心が満たされる』『悩みが解決する』『受け入れられている感を抱ける』といった、社会構造と世界観を変更しないでも、今よりちょっとましになる、幸せになりますという形のキリスト教として提供すれば、多くの人が興味を持つかもしれません。しかし、『キリストを信じることは、神の民とされて、この世の寄留者として共に旅することです』と語るなら、多くの人にとって、途方もなく恐ろしくて困難なことを要求されていると感じられることでしょう。その事実を曖昧にして勧誘するなら別ですが」
「それでも、わたしは信じています。そうした在り方に魅力を感じる人たちがいるということを。それなのに今の伝道は、どうやって人を集めるかとか、どうやったら人が来やすくなるかとか、そんなことに終始していないでしょうか。それはもちろん大切です。しかしそれだけだとしたら、それはキリスト教の堕落に他なりません。安っぽいキリスト教、安価な福音にしてしまうことですから。この世の価値とか、この世の安心や自己肯定というものを離れて、キリストの与えてくれる望みと価値を第一に求めて生きていくということを明確にしないと、キリスト教は新興宗教化してしまうことでしょう」
「ある人々はこう言います。『どのような形であれ、キリスト教に触れる機会になるならよいのではないか。そこを出た人が別の教会に行くなら、結果としてはよいのではないか』。しかしわたしは、それより遥かにたくさんの『キリスト教ってこの程度のものか』とがっかりする人を生み出すことになると思います。わたしたちは『幸運』や『心の悩み解決』『安心感』といった要望に応えるのではなく、キリスト教本来の使信、すなわち福音を明確に告げ知らせ、宣言すべきです。……わたしたちはこの世を喜び楽しみ、一生懸命生きながら旅してゆきます。しかしそれは旅の途上のことで、真の目的地は天の国にあることを、なによりも大切なこととして告げ知らせる責任をキリストに負っていると思うのです」
【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】