【書評】 『教会を通り過ぎていく人への福音』 東方 敬信 他

牧師は「教会を通り過ぎていく人」に何をどう語るのか
教会や大学の礼拝に出席することはあっても根付くことのない人たち、「教会を通り過ぎていく人たち」にどうやって福音を伝えていくか。日本の教会やキリスト教主義大学でも大きな課題であるこの問題が、本書の通奏低音となっている。
本書は、現代の米国を代表する説教者ウィリアム・ウィリモンと神学者スタンリー・ハワーワスによる対話。ウィリモンの10編の説教を、聴き手であるハワーワスが批評する形で構成されている。
ウィリモンはデューク大学チャペルの主任牧師。毎週日曜日、同チャペルには満杯になるほどの人が集まるという。しかしその多くは「通り過ぎていく人々(ストレンジャー)」。彼らに説教をすることは、共通の伝統を持たない人々に説教をすることを意味するとハワーワスは言う。そこが、洗礼を受けた会衆が集う普通の教会との違いだが、ハワーワスは、今日の教会のほとんどの説教が「通り過ぎていく人々」に対してなされる状況にあると指摘する。ウィリモンも、福音伝道の説教は、キリストの名において寄留者(ストレンジャー)たちへのもてなしを提供する説教だと述べている。
「通り過ぎていく人々」への説教は、聴き手に迎合することではない。聴き手にも、語られていることを聴き取る「耳」が必要なのだ。説教は説教者にも聴き手にも変革を要求してくるということを、双方が意識しなければならない。
【本体2,200円+税】
【日本キリスト教団出版局】978-4-81840-948-4