【書評】 『聖地巡礼リターンズ』 内田 樹 他
内田・釈の「巡礼コンビ」がキリシタンの「聖地」に帰ってきた! 宣教の起源めぐり新説も!?
思想家で武道家の内田樹と僧侶の釈徹宗が日本の聖地を巡る第3弾。今回は隠れキリシタンの里、長崎をメインに京都・大阪にも足を伸ばす。
長崎の町に一歩入ればいたるところにキリシタン信仰の跡がうかがえる。教会跡地の寺、イエズス会本部跡、キリシタンが密かに集まり祈りをささげていた神社。
「日本二十六聖人記念館」にはフランシスコ・ザビエルがローマに宛て日本のキリシタン弾圧の様子を書いた書簡や、隠れキリシタンの家に代々伝えられてきた国内で唯一現存する和紙に描かれたマリア像が常設。イタリアから宣教師が絵を教えに来ていたというだけあって、400年前の日本人が描いた画とは信じがたい芸術性の高さだ。
長崎で殉教した二十六聖人は、京都・四条通りにあり「ダイウス町」と呼ばれていた地域の教会、病院、学校で働いていた人たちという事実、心臓が燃えている有名なザビエルの肖像画は大阪・茨木市の隠れキリシタンの家から発見された事実など、本書で改めて知る内容も多い。
宣教師たちは日本人の気質を読み、救世主的教えは施しても「三位一体」は教えなかったことから、二人はキリシタンらのそれはキリスト教というより「キリシタン」という宗教だったのではと推察している。彼らの巡礼をたどるうちに、知っているつもりの歴史の違う顔が見えてくる。
【本体1,600円+税】
【東京書籍】978-4-48780-841-0