【書評】 『老いと勝負と信仰と』 加藤 一二三

 史上最年少で将棋棋士となり、以後数々のタイトルを獲得、現在は「ひふみん」の愛称で親しまれている加藤九段による生き方の指南書。2011年に発行したものに、新しく「逞しく意気軒昴、いつも微笑んでいたい」を収録した。

 1986年にバチカンより「聖シルべストロ教皇騎士団勲章」を贈られた著者は、将棋と信仰はどちらにも「ゆるぎないもの」があり、それを求めることが大切と語る。生き方や勝負について語るすべての章に、聖書学的視点が用いられていることが興味深い。

 加筆された章では、信仰を持つこととで、揺らがない芯と同時にいろいろなものを受け止める柔軟さも生まれるため、「剛毅と柔和」につながると説く。将棋界で偉業を成し遂げた棋士の、敬虔深いカトリック信者の姿を見る。

【本体760円+税】
【ワニブックス】9784847060359

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