【雑誌紹介】 道徳も人文学も排除され… 『神学ダイジェスト』2026年夏季号

特集「今日のカトリック倫理神学」。秋葉悦子(富山大学名誉教授、教皇庁生命アカデミー正会員)の「AI技術の規制――執事としての自律的管理責任」。
「日本で科学技術規制が進捗しない原因の一つに、先端医療技術規制が議論された時にも見られたように、実証主義思想の支配がある。実証主義法学は、法律の基礎にある道徳法則を排除し、法律も理性も脱道徳化、脱哲学化して、すべてを物理法則の支配下に置く。……世界平和を目指す今日の国際法の起源もローマ法であり、その基盤は全人類共通の普遍的善を探究する自然道徳法である。新たに開発されたAI技術の法規制を構築するための枠組み、体制、前例に関する文献資料は無尽蔵である」
「日本の現行刑法は、戦前にドイツから輸入したローマ法体系の法律だが、二十世紀初頭に流行した実証主義思想の影響を受け、刑法の基盤にある道徳も人文学も排除してしまった。『人間には良心に刻まれた道徳法則に従う自律意志があり、それゆえ道徳的責任がある』という、物理的には実証できない哲学の一般命題も排除された。刑法は事実を扱う自然科学へと変容し、理性も物質化された。この見地から見ると、人間の脳の構造を模したニューラル・ネットモデルのパターン認識システムで、予めプログラムされた物理的プロセスに従ってビッグ・データの統計処理を超高速で行うAIが人間の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)、ポスト・ヒューマニズムはすでに到来している。もとより道徳的責任それ自体が存在しない実証主義法学の世界では、科学技術の善用法、人間性にかなった使用法は議論できない。先進科学技術がもたらす脅威に対抗するために、さらなる科学技術の開発を急ぐことになる」
「しかし物理法則による社会統制、秩序づけの不合理性は、物理学自体がすでに証明している。すべての物質はエネルギーの象徴にすぎず、宇宙全体は常に秩序から無秩序へ、価値と体系から混沌と荒廃へと向かう巨大な流れの中にある(熱力学の第二法則)。トロント大学でAIビジネスを率いているアグラワル教授によると、AIと人間の知能の違いについて、コンピュータ・サイエンスや心理学、生物学、神経科学などの専門家と議論すると、自由意志――自律意志と同義――に突き当たるまで会話が終わらないという。それは科学ではなく、我々が自由意志を信じているかどうかに関する、宗教の問題であるという。自然科学技術を人類社会の中に正しく秩序づけ、調和を保つためには、人文学の知恵が不可欠である」
【640円(本体582円+税)】
【上智大学神学会】















