【雑誌紹介】 福音宣教 10月号
宗教社会では寄付の金額も多く
特別企画対談=これからの社会と宗教を考える。『宗教が果たしうる可能性』で、イエズス会司祭の英隆一朗を相手に東京工業大学教授の中島岳志が《インドとかイスラム圏、あるいはアメリカで、なぜ日本より圧倒的に寄付の金額が多いのかと言えば、宗教社会だからです。
つまり、一つは隣人愛の実践というような教義的なものがあるかと思いますが、もう一つは宗教コミュニティーの存在です。インド人はどこかの寺に 属しています。寺の中には貧しい人たちもいるので、一定程度金持ちになると喜捨をすることが当然の義務だと考えられています。
日本でもこれから、このような他者への連帯や再配分などの制度を考える際は、公共における宗教の役割というものが、案外重要だと思います。ところが日本の政策担当者はみんな功利的な発想なので失敗するのです。
宗教コミュニティーは、トクヴィルなどが強調したように中間共同体としていちばん重要です。ところが、日本はそこが抜けてしまっている。そこをもう一回立て直すということが、社会政策的には重要だと思います》と。
英が福田恆存(つねあり)の「一匹と九十九匹と」という批評に触れ《政治は九九匹を救い、文学が残った一匹を救うという内容は、ルカ福音書の15章に出てくる話と同じです。その文学にあたるものは、少なくとも宗教の役割です。政治が九九匹に寄りがちな面があるのは仕方ないでしょう。だからこそ宗教は見失われた一匹に焦点を当てていく。そこに存在意義と意味があるし、公共的なものを埋めていくことを地道にやることにつながると思います》と。
【 本体500円+税 】
【オリエンス宗教研究所】