【雑誌紹介】 「あなたは救われていますか」 『福音と世界』(10月号)

 特集「救いとは何か、どうしたら救われるのか」。加納和寛(関西学院大学神学部教授)による「救いは判決か、交わりか――贖罪論のその先にあるもの」。

 「日頃からお世話になっている新約研究者からうかがった話である。数年前、ある神学校での牧師対象のセミナーで講演をされた際、会場で配布・回収された質問票の一枚に、たった一言『あなたは救われていますか』と記されていた、という」

 「『あなたは救われていますか』という問いに、筆者はやはり即答できない。仮にこの問いが法廷的贖罪論の地平からの冷ややかな確認であるとすれば、本稿で取り上げてきた近代以降の神学的議論にもかかわらず、なおそう単純に問い得るとする前提そのものをまず問い返さなければならないだろう。もちろん別の読みもできる。質問者は新しい生の交わりへ招かれた喜びに満たされていたが、同じ喜びが講演者からあまり伝わらないことを訝しく感じたのかもしれない。だがそうだとしてもさらに問いは残る。神の先行的な贈与としての『高価な恵み』を受け取り、新しい生に満たされている者が、皮肉さえ感じるこのような断罪的な問いを他者に発し得るだろうか」

 「モルトマンによれば、新しい創造のうちにある神の臨在と内住こそが、無意味性と神の不在が根底にあるこの世界の経済・政治・文化・環境のあらゆる諸矛盾を癒やし、意味を与える。この神が与える意味の現臨をわずかなりとも垣間見た者は、もはや他者に向かって『あなたは救われていますか』などと問いただすことはないであろう。そうではなく、個人的次元であれ、社会的次元であれ、宇宙的次元であれ、神による創造世界の解放と変容に参与する喜びに満たされながら、やがて全宇宙が唱和するであろう神への永遠の賛美に、今ここで加わる一つの声となろうとするにちがいない」

 鈴木道也(日本基督教団花巻教会牧師)は「新約聖書における救いとその多様性――四福音書を中心に」の中で次のように指摘する。

 「私たちの内には或るひとつの信仰理解だけが存在するのではなく、多様な理解が存在しているのである。……この内なる多様性を個々人が取り戻していくことは、いまを生きる私たちにとって重要なことであろう」

 「『取り戻す』という表現を用いたのは、私たちはこれまで、自分で自分を縛ってきてしまった側面があったと考えるからである。或るひとつの信仰理解・救済理解だけが『正しい』として(そう教えられてきて)、他の信仰理解を自ら切り捨ててきてしまった。それはこれまでの日本のキリスト教会の歩みもまた同様の側面があったように思う。自分の内にも、いや自分の内にこそ、多様で豊かな世界が広がっており、相互に補完し合っていることを受け入れること。そのことが、同時に、自分自身を相対化し、自分とは異なる他者を受け入れることにもつながっていくのではないか。自分の外に広がる、多様な世界を認めることにもつながっていくのではないか」

【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】

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