「アラー」使用認める判決にイスラム教徒反発 教会への襲撃相次ぐ マレーシア 2010年1月23日

 【CJC=東京】マレーシアのクアラルンプール高裁が12月31日、キリスト者も神について「アラー」という呼称を使う憲法上の権利がある、と判示した。イスラム教徒以外が「アラー」を使用するのを禁止したことを違憲としたもの。
 カトリック教会が発行する週刊英字紙「ヘラルド」編集者のローレンス・アンドリュー神父は2007年12月、「アラー」の使用許可を求め裁判を起こした。
 イスラム教徒が国民の多数派を占めるマレーシアで、政府は、イスラム教関係以外のメディアがイスラム教の唯一神を示す「アラー」という言葉の使用を禁じていた。その後、制限事項を撤廃するなど出版規制が改定され、アンドリュー編集長は、発行許可更新の際に制限が付けられなかった、として使用したことが問題となった。
 アブドラ・モハメド・ジン首相府相は08年1月の会見で、「内閣は昨年、2度にわたり同誌の『アラー』使用禁止を決議しており、この決定は依然、有効だ」と使用停止を求めた。さらに国内治安省(内務省)が2月、「イスラム関係者のみ使用できる表現」とし、禁止を命令した。
 政府側は、「アラーという表現を使用する権利の問題は裁判になじまない」と主張したが、ラオ・ビーラン判事は、裁判で争われるべき権利として5月、クアラルンプールで政府側の請求を退け、提訴を認めると判示し、今回の決定となった。
 これを受けて首都クアラルンプールでは1月8日、教会4カ所に火炎瓶が投げ入れられるなど、イスラム教徒によるカトリック教会や関係施設への攻撃が続いている。
 クアラルンプール北方のペラ州タイピンで教会と修道院学校に爆弾が投げ入れられた。聖公会教会でも割れたビンやシンナーが発見された。タイピンでは他2カ所の教会も襲撃された。ボルネオ島サラワク州の教会も被害にあった。マラッカ州では、バプテスト教会の外壁が黒色のペイントで塗りたてられた。
 マレーシア人口2800万人の9・1%を占めるキリスト者は中国系かインド系で、その大半がサラワク州と隣接するサバ州に居住している。
 マレーシア教会協議会のヘルメン・シャストリ総幹事は、「過激派による脅威を絶つことに共に立ち上がる必要がある。キリスト者は攻撃に脅えるな」と述べた。

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