カストロ議長が教皇と「私的」会見 宗教に対する姿勢軟化を決意 2015年5月23日
教皇フランシスコは5月10日、バチカン(ローマ教皇庁)でキューバのラウル・カストロ国家評議会議長と「私的に」会見した。約50分間の会見で、カストロ議長は、キューバと米国の歴史的な国交正常化交渉開始に向けて教皇が行った仲介に謝意を伝えた。バチカン広報事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父が明らかにした。
キューバ元首のバチカン訪問は1996年のフィデル・カストロ前議長以来。
議長は随行のブルノ・ロドリゲス・パリジャ外相を伴い、パウロ6世ホールの隣にある部屋で教皇と会見した。会見はスペイン語で行われた。
議長は、教皇の「謙虚さと英知」に「非常に感銘を受けた」と述べ、9月に教皇がキューバを訪問する際、教皇のすべてのミサに出席すると約束した。
米メディアCNNによると、カストロ議長は会見後、教皇の教えのおかげで宗教に対する姿勢の軟化を決意しただけでなく、自身も再びカトリック教徒として祈りをささげたい気持ちになったと表明した。
カストロ議長は「教皇の説話は全部読んだ。もし教皇がこうした発言を続けるのなら、遅かれ早かれ私も再び祈りをささげるようになり、カトリック教会の信者に戻るだろう。これは冗談で言っているのではない」と語った。
キューバでは兄のフィデル・カストロ前国家評議会議長が1961年に「私はマルクス・レーニン主義者であり、生涯それを貫く」と宣言して以降、カトリックなどの宗教を信仰する国民が厳しく弾圧された時期もあった。
1992年の憲法改正で宗教に対する差別は禁止されたものの、米国務省の昨年の年次報告書によれば、キューバ政府は依然として宗教活動に対する規制を続けているとされた。
CNNは、カストロ議長が10日、「私はキューバ共産党の共産主義者だ。党は信教を許してこなかったが、今は信者も我々の一部であることを認める。これは重要な一歩だ」と言明したと報じている。
教皇は9月下旬に米国を訪問する際、往路にキューバを訪問する予定。教皇フランシスコの米国、キューバ訪問は一昨年3月の着座後初めて。教皇のキューバ訪問は先々代の故ヨハネ・パウロ2世(1998年1月)、前任のベネディクト16世(2012年3月)に続き3人目。(CJC)