【伝道宣隊キョウカイジャー+α】 誰の手柄のためでもなく キョウカイブルー 2019年3月21日

 小さな小さな共同体なのに、「あの人とは絶対に話をしない」という人がいるかもしれない。きっかけは、小さなこだわり、すれ違いに基づくものであって、時間が経てば水に流せそうなことも多い。議論がヘタなゆえに人格的な関係性を壊してしまったという場合もあるかもしれない。自分なりに正しさを貫き通したつもりだけれども、その結果、今の状態があると弁明したくなる人もいるだろう。あくまでも悪いのはあっちだ。仲が悪くなるには事情がある。そうでない仲違いは単にお互いが未成熟なだけだ。

 恥ずかしい話になるけれどもブルーの所属する教会では、仲違いする人たちが一つの会議体を形成している。会議というのは人格と切り離して議論を進めていき、1人の能力では発揮し得ないような、幅広く、奥深く、あまねく気の利いた決議を理想として紡ぎ出す営みだと思っている。なのに、この会議体では発言した人物が誰かというところを起点としてディベートが始まってしまう。

 結局はアイデアについての勝ち負けを争う場になることがあるのだ。アイデアが通ったか通らなかったかが成果として認識されてしまっている。人に属するアイデアの小ささや浅はかさを認識して、一つのアイデアに対して、他のアイデアや、もう一つのアイデアがすいこう提示され、比較や推敲や組み替えしょうかを通して昇華されていったアイデたまものアこそ会議体の最高の賜物だとブルーは思っている。

 会議の中で敵対者に勝つことを目的にしている人は、その賜物を一緒に見つけてみたいという要求はないのだろうか。会議体の協議の成果物は誰のものでもなく、誰かの手柄でもないことこそ最良なのに、誰が勝ち得たタイトルなのかが関心事として扱われることがある。そんな時、会議体としての未熟さを実感してしまう。愚痴は言いたくないけれども、こだわり続ける人がいることで自分も同じ狭い空間に閉じ込められてしまうように感じられる時がある。

 そんな閉塞感にグズグズしていた時期、私たちの大切な仲間の1人が極めて厳しい宣告を受けることになった。その人の人生におけるアクシデントでもあり最難関の課題とも言える状況だ。それははじめ、わずかな友人たちとブルーが知るのみだった。あとの人は突然その人が教会で姿を見せなくなったことに、いぶかしさを感じ、やがてさまざまなうわさ話が生成されていった。

 しかし、その人が受けた宣告の厳しさが漏れ伝わると、動揺と心配が入り交じった空気が広がった。心配している声を伝えたいけれど伝えるすべがない。励ましたいけど励ましになる言葉が見つからない。仲間のアクシデントになすすべが見つからず、遠慮のかたまりたちが教会の網戸を目詰まりさせていこうとしていたころ、自然発生的に「一緒に集まって、あの人のために祈らない?」という声が湧き始めた。

 人生について深刻に考えざるを得ず、厳しい場面で個人の力が何の役にも立たないことを痛感した時に、何もない私たちは誰の手柄のためでもなく、ただ神様にだけ願いを投げかけていくことに気づかされたのだ。そこには誰かが言い出したから賛成/反対だという声もなく、大切な友のためだけに生まれた一つの輪があった。誰のものでもない真空に向かって捧げられる声が響き始めた。「私たちの教会が、本当の教会になりましたね」。そうつぶやいた方の言葉が忘れられない。

キョウカイブルー
 青葉良好(あおば・りょうこう)革新的なテクノロジーには目がないインテリ系電脳牧師。クールに見えて実はツンデレ。電子機器を駆使して仕事をどう能率良くできるか、いつも考えている。メンバー内では最年長。武器:最新型タブレット「なんでもできるホン」/必殺技:プチニンノーダー(整理整頓)/弱点:新型ガジェット

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