〝差別されている側の視点を〟 ライターの小川たまか氏が提言 2019年6月19日
「出版・報道と性暴力・性差別」をテーマに、キリスト教出版販売協会の出版部会(髙橋真人部会長=教文館)と販売部会(前山新部会長=日本キリスト教団出版局)による差別問題合同例会が6月14日、東京・早稲田の日本基督教団会議室で行われた。性暴力やジェンダー問題を中心に取材を行っているフリーライターの小川たまか氏を講師に迎え、約20人の参加者が意見を交わした。
性暴力被害当事者を中心とした「一般社団法人Spring」のメンバーや、「性暴力と報道対話の会」のスタッフとしても活動し、昨年『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)を出版した小川氏は、「差別されている側と、そうでない側から見た社会の違い」について指摘。「差別されている側」にはそれまでの人生で度重なる差別に苦しんできた歴史があることを強調し、「差別されている側」と「そうでない側」によって「見えている風景」に違いがあることをまず理解するように求めた。
その上で、痴漢被害の実態や過去の性犯罪事件を紹介し、痴漢が「小さな暴力」としかみなされていなかった歴史、性犯罪の被害者に落ち度があったと誤解され、被害者が繰り返しバッシングを受けてきた歴史を解説。現在、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターが全国の都道府県ごとに1カ所以上設置されているものの、国連の指標では女性の人口20万人につき1カ所の設置が求められており、それと比較しても6分の1にすぎないこと、性犯罪・性暴力被害者支援交付金の年間予算も2憶1千万円と少ないことから、日本の性犯罪被害者支援の貧弱さを訴えた。
最後に、出版に携わる参加者に向けて、「他人を傷つけたい、差別したいという気持ちは誰にでもある。それをわきまえつつ、自分の中の偏見や差別とどのように戦っていくかを常に考え続けながら出版物を作ることが大切」と語った。
参加者たちは、「教会内の男女差別の問題についても各社が取り上げていく必要があるのではないか」「声を上げる際に、そもそも語ることができない人が背後にいることをどう考えるか」「小説などの創作物において性暴力や性差別を助長するような表現をどのように食い止めることができるか」といった問題を話し合った。