【教会では聞けない?ぶっちゃけQ&A】 牧師の謝儀に税金は? 大島有紀子
Q.牧師の収入にはどのような場合に税金がかかりますか?(40代・教会役員)
教会は宗教法人ですので、公益法人として収益事業でない限り納税義務はありません(法人税法4条)。他方、牧師個人の収入についてはそのような規定はありません。職業の区別なく、個人が職務の対価として得たものは事業所得や給与所得になります。その他の所得についても、牧師に特別なことはありません。
さて、牧師の収入の主なものは教会からの謝儀でしょう。教会と代表役員である牧師との関係は、会社と社長の関係と同じで委任関係と言えますが、牧師の仕事は多岐に渡っています。礼拝の主催や信徒に対する牧会、信徒以外であっても教会の門をたたいた人、あるいは教会の門の外にいる人に対しても心を配り牧会を行うことがあり、これらの仕事は魂の医師とでもいうべきで患者と医師との関係と並べることができます。また、副牧師、伝道師などは教会との関係では、どちらかというと雇用関係と言った方がいいかもしれません。
いずれにしましても、謝儀など名目の如何にかかわらず、牧師としての職務の対価として払われるものは、報酬もしくは給与になります。その他、教育機関に勤務している場合や、非常勤のアルバイト、講演料なども当然給与もしくは報酬です。これらは源泉徴収された金額が支払われることが多いと思いますが、その他、葬儀や結婚式などを司式した場合に、教会とは別に個人に支払われた謝金も、教会の規定や実務上支払うべきものとされていれば職務との対価性があり、課税される収入となるのが原則でしょう。
ところで、私も仕事上、約束した報酬とは別に、のし紙に包んだ現金や商品券などを差し出されることもあり、その気持ちをいただくこともあります。職務と関係はありますが、クライアントに支払い義務のないものでありますので、社会儀礼上相当な範囲なら、贈与と考えてもいいのではないかと考えています。ご参考に。
おおしま・ゆきこ 弁護士。1952年東京生まれ。72年受洗。中央大学法学部卒業。84年に千葉県弁護士会へ登録。渥美雅子法律事務所勤務を経て、89年に大島有紀子法律事務所主宰となり現在に至る。日本基督教団本所緑星教会員。