『わたしが「カルト」に?』出版記念でカルトの本質に迫る 2023年9月11日

 『わたしが「カルト」に?』(日本キリスト教団出版局)の出版記念トークイベント(仙台キリスト教書店、日本基督教団東北教区センター主催)が8月8日、日本基督教団東北教区センターエマオ(仙台市青葉区)を会場に、Zoomを併用したハイブリット形式で開催された。著者である竹迫之(日本基督教団白河教会牧師)、齋藤篤(日本基督教団宮城野教会牧師)の両氏、および監修を務めた川島堅二氏(東北学院大学教授)が登壇し、同書の内容を掘り下げつつ、カルトをめぐる本質的な問題に迫った。70人が参加した。

 著者の2人はいずれも元カルト宗教信者でもあり、現在はカルト被害者支援に携わる。同書は、カルト問題の現状、カルトの基礎知識、被害防止の対策などを指南する一方で、統一協会やエホバの証人のようなある特定の反社会的集団だけでなく、個人的な人間関係でもカルト化は起こり得ると指摘。誰もがカルト化する可能性があると知ることが、カルトへの最大の防御になるという。

 オンラインで参加した同書の編集者である市川真紀氏は、企画から刊行に至るまでの経緯を振り返り、同書のもう一人の貢献者として寄稿「『わたしがOK』と思えるようになるまで」を寄せた齋藤朗子氏(日本基督教団宮城野教会牧師)の存在の大きさを語った。「ご自分の体験をカルト宗教2世として書いてくださった。今現在もお母様がエホバの信者で、お母様との関係性がこれまでどのように紡がれてきたかが描かれた秀逸な証しになっている」

 齋藤篤氏はカルトを「ゆがんだ支配構造によって本来人間に備わるべき人権を奪い、さまざまな弊害をもたらす状態」と定義する。竹迫氏もカルトと宗教が混同している現状を指摘し、「カルトは宗教に限ることではない」ことを明言する。これらを前提とした上で川島氏が問題提起したのは、「カルト問題を宗教が責任を負うべきなのか」「支配がどれだけゆがんだらカルトになるのか。どこからどこまでという線引きができない領域なのではないか」の2点。

 竹迫氏は、「カルトはあくまでも人を支配する手段として宗教を用いているに過ぎない」と強調する一方、カルトという現象を消去法で見ていくと、そこには本来宗教が目指すべきことが表示されるとし、「宗教がより宗教らしくなっていくことがこの機会に必要とされているのではないか」と語った。

 齋藤氏も、「宗教の本来の目的と逆のことをしていく時にカルト化してしまう。そこがカルトを『ゆがんだ支配』と定義づけした一番大きな理由」と 述べた。また、カルトと宗教の違いは明確に語れるが、どこからカルトなのかの線引きとなると明確には語れないことも明かした。それでも、同書に掲載されている「カルトチェック表」を使えば、大方の傾向をつかむことはできると話す。

登壇した(左から)齋藤、竹迫、川島の3氏

 さらに「異端」についても言及。川島氏によるとオウム真理教の事件以前は、キリスト教界において問題視されていたのは異端とどう向き合うかだった。しかし、現在はカルト対策に重点が置かれ、異端はあまり問題にされなくなってきている。川島氏は、文化庁の『宗教年鑑』が発表する信者数のデータから、異端のキリスト教会の信者数が正統派のキリスト教会の信者数をはるかに凌いでいることを示しながら、日本人が最初に出会うキリスト教が異端の教会という可能性が高いのではないかと危機感を示した。

 それに対して齋藤氏は、異端がカルトとは切り離せない部分があるとしながらも、異端はキリスト教会内部の問題であると応答。相談者が知りたいのは異端かどうかではなく、カルト性の有無であり、社会問題としてカルト問題を取り上げていることを説明した。竹迫氏も異端の扱いについては齋藤氏と同意見ではあるものの、異端というのは福音の私物化であり、ある特定の人たちが救いを可能にするような教義解釈をしてきた歴史があることを加えた。

 その後の質疑応答で宗教教育について問われた竹迫氏は、宗教に対する知識があれば統一協会にのめり込むことはなかったと明かし、キリスト教に限らず宗教リテラシーの必要性を強調。また、「闇バイト」も一種のカルトではないかという発言もあり、聞こえのいい言葉で人の心に入り込んでくるカルトからどう身を守ればいいのか、正統な教会の数が減っていく中で、教会はカルトの砦でいられるのかとの質問が出された。竹迫氏は、キリスト教とは無関係でも福音的な交わりをしている団体があり、そういった団体の健全性を見極め、知らせていくことも教会の大きな役割ではないかと話した。

 10月14日には、統一協会からの脱会を支援した神保タミ子氏による手記『脱会』(キリスト新聞社)と合同での出版記念トークライブ「カルトと教会――統一協会問題を他人事にしないために」が、お茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)で開催される。当日は神保氏と竹迫氏がそれぞれの体験を共有しながら、教会にできるカルト対策と脱会者へのサポートなどについて語り合う。会場観覧 1,000円、オンライン視聴800円。参加申し込みは特設サイト(https://cultandchurch.peatix.com/)、またはキ リスト新聞社(Tel 03-5579-2432)まで。

【新刊】 新装改訂版『脱会 今こそ知っておくべき統一協会の実像』 神保タミ子

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