「嘘も知恵」「再臨のキリスト」の教え クリスチャントゥデイ問題 脱会者が法廷で実態を初証言 無給で長時間労働、家賃滞納が常態化 2023年12月25日
天城山荘を新たな拠点とし、活動を活発化させている日本オリベットアッセンブリー教団(尾形大地教団議長)をめぐり、その実態について改めて司法の場で明らかにされた。
株式会社クリスチャントゥデイ(矢田喬大社長)がクリスチャン新聞編集顧問の根田祥一氏に対し、SNSでの投稿などが名誉棄損にあたると訴えていた裁判で12月6日、東京地裁に2人の脱会者が証人として出廷し、共同体にいた当時の様子などを詳しく語った。一連の問題で、張在亨(ジャン・ジェヒョン=ダビデ張)氏の管理下にあった教会の元信者が実名で証言をしたのは初めて。
訴状によると原告は、匿名で開設されたブログ「ダビデ牧師と共同体を考える会」の記事を根田氏がSNSでシェア・拡散したことにより、社会的評価が貶められたと訴えている。同ブログには、事実に反する「攻撃的、侮辱的な表現」が用いられている部分があり、他人から聴き取った内容が「体験談」を装って書かれているとも主張していた。根田氏はこれらブログ記事を引用する形で、ダビデ張氏が目指す野望のためには「嘘も、詐欺的な手段も、踏み倒しも、信者の犠牲も厭わない精神構造である」「淀橋教会に、クリスチャントゥデイだけでなくダビデ共同体の各部署にいる信者たちが計画的に送り込まれていた」などと投稿していた。
裁判では、この間、クリスチャントゥデイの従業員として働きながら、その後離れていった記者らの動向を報じてきた本紙の関連記事も、客観的証拠として複数提出されている。
今回、地裁で認められた被告側の証人尋問では、2000年代初頭、ダビデ張氏が指導する共同体に属し、同氏の指示でクリスチャントゥデイに勤務した経験もあるという2人が出廷。いずれも脱会後、根田氏が引用したブログ「ダビデ牧師と共同体を考える会」で「体験談」を書いている。
証言台に立った脱会者は、それぞれクリスチャントゥデイ在職時の体験を詳細に語った。その証言には、救世軍の山谷真氏が同じく名誉棄損で訴えられた裁判で事実認定された内容も含まれている。証言によると、共同体の運営する会社が家賃の滞納を繰り返し、たびたび転居を余儀なくされてきたこと、共同体の中で「嘘は知恵のうち」と教えられたこと、共同体の企業で働いていた信者は「使役」と称して雇用契約もなく、ほぼ無給で長時間労働に従事させられていたこと、韓国クリスチャントゥデイとは無関係の別媒体だと公言していたのは嘘であること、ダビデ張氏の運営は統一協会流であったこと、本人の意思とは関係のない相手と結婚させる「聖婚」が集団で行われていたこと、信用を得るために淀橋教会(ウェスレアン・ホーリネス教団)をはじめとする大きな教会に入り込むよう指示があったことなど、遵法精神に欠ける共同体の実態を読み取ることができる。
証言者らは、かつてクリスチャントゥデイの編集長だった人物とともに「ダビデ張を再臨のキリスト」とする講義を受けたこと、脱会後に初めて根田氏と面会した際、「根田は敵」と教え込まれていたため、2ちゃんねるに誹謗中傷の書き込みをしてしまったと詫びたこと、犯罪だと知りながら無賃乗車を繰り返したことも打ち明けた。
被告側はこれらの証言について、原告を含む共同体における反社会的な実態を社会とキリスト教界に知らしめ、自身が受けたような被害を防ごうとする脱会者の良心に基づく内部告発だったとし、根田氏が記事を引用した意図も、原告メディアを警戒することなく利用していた牧師や信徒に知らせる必要があると考えたからと主張している。
ダビデ張氏は1972年から1998年にかけて、統一協会の幹部として活動した後、大韓イエス教長老会合同福音を創設し、キリスト教の一グループを標榜して宣教活動を行っている。
日本基督教団は2018年、元信者らの証言や関連する裁判の判決を鑑み、総会議長名で「キリスト教として同一の線に立つことはできない」と判断した2006年の総会議長声明を再確認し、距離を置くことを表明した。
共同体に属する諸教会は2018年に日本オリベットアッセンブリー教団と改称。現在の公式サイトでは、教団の概要について「2012年、アメン教団からあいのひかり教団に改称」とのみ説明しているが、「東京ソフィア教会」「あいのひかり教会」などを名乗っていた2012年以前の沿革については一切言及していない。これまでの証言などによると、共同体は株式会社クリスチャントゥデイのほか、株式会社ベレコム、ブレスキャスト、ジュビリーミッション、ACM(現在はAM)なども運営しているという。
原告代理人は被告への尋問で、ブログの内容を事実だと信じるに至った根拠、証言者の情報について原告側への事実確認をしなかった理由などについて糺(ただ)したが、根田氏はこれまでの取材経験もふまえ、カルト的教団の現役信者が真実を話すとは到底考えられず、彼らに真偽を問うこと自体に意味は見出せないと応じた。また裁判に訴えられた心境について問われると、「共同体の実態を法廷で明らかにすることができ、むしろ喜んでいる」と語った。
判決は早ければ来年春ごろに出る見通し。
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