【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 「復活」の第一条件 山口元気 2024年10月1日

 2020年春。新たな思いで伊勢の山田教会に着任しました。しかし、すぐさま緊急事態宣言。教会にもともに歩む幼稚園にも次々課題が舞い込んできました。ただ幼稚園はコロナ禍問題以前に、園児減少による深刻な存亡の危機に直面していたのです。

 翌年春。新入園児1名。全園児も1桁台。巷に広まる閉園の噂。止まらない転園ドミノ。涙の職員会議。重苦しい保護者説明会。新入園児ゼロの年が一度でもあったらおしまいと聞かされていましたが、翌年にはそうなるだろうと思われました。走りまわる園児のいない園庭が、だんだん芝生に覆われていくのを眺めながら「閉園」の二文字がよぎりました。

 ただ、伊勢神宮の目の前に立つ私たちの教会がこの町に深く根付いている幼稚園を失うということは、伝道の重要な橋頭堡を失うということ。幼稚園の危機は教会の危機でもあったのです。それゆえ閉園という選択肢はありえませんでした。でも、打つ手もありませんでした。

 しかし、ご安心ください!私には前任地で閉園寸前の教会幼稚園を立て直した輝かしい実績があるのです!……と言えたらよいのですが、あいにく私は新米園長。本当に本当に、何も持っていませんでした。万事休す。出した答えは……「みんなで祈りましょう」。

 長老会で話し合い、礼拝後に「常盤幼稚園のために祈る会」を持つことにしました。「神様、どうしていいか分かりません!」「何をなすべきかお示しください!」「神様、園児を与えてください!」――牧師長老はじめ、教会員の中にいる園の職員が、理事が、元職員が、卒園生が、そしてみんなが、ただただ主に向かって一心に祈りました。

 不思議なことが起きました。月に一度、皆で祈るたびごとに、園児が一人また一人と増し加えられていったのです。園児1桁の、地方の、古ぼけた、閉園の噂の立つ幼稚園にです! もちろん私たちはできることを精一杯がんばりました。しかし、そのようながんばりの成果というだけではまるで説明のつかない出来事が起こり続けたのです。

 これはあくまで幼稚園の例であって、地方教会の伝道云々に直結するものではないでしょう。でも、私は確信を深めています。地方であろうが都市部であろうが、伝道には奇策も特効薬もないのだと。「何か良い手は」とあれこれ漁っている限り、一時的な自己満足や多少の延命はありえても、教会の「復活」はありえないのだと――。

 幼稚園が死の陰の谷を歩いていたあのころ、主は私に「延命ではなく復活を」という言葉を示してくださいました。では、「復活」の第一条件は何でしょうか。あれこれがんばることではありません。起死回生のアイデアではありません。復活の条件は「死ぬこと」です。単純なことです。教会は、復活の前に、死ななければならない。あらゆるものに死なねばならない。そして残されているただ一つの道、そう、神の民、代々の聖徒たちの足跡で踏み固められた「祈り」という道へ、心一つに踏み出していく――。今、園児たちが縦横無尽に走り回る園庭を眺めながら、改めて心に刻みたいと思います。この道だけが、復活に至る道なのだと。

 4年前の夏に始まった祈り会はその後、「教会全体で祈る会」と名を変え、今なお続いています。

やまぐち・げんき 1983年神奈川生まれ群馬育ち。17歳のクリスマスに受洗し、19歳で東京神学大学へ。日本基督教団都城城南教会(宮崎)を経て2020年春から日本基督教団山田教会(三重)牧師、常盤幼稚園理事長、園長。最近の趣味は捨て活、サ活、あてなきドライブ。

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