若者に届く教会へ 元ICU教員の有馬平吉氏が「聞き手」となる大切さ語る 2026年6月9日

 関東教区教会婦人会連合第52回総会にあわせた講演会が6月4日、日本基督教団四條町教会(栃木県宇都宮市)で開かれ、元ICU高校教員の有馬平吉氏(単立秋川キリスト集会牧師)が「若者たちとの宗教対話」をテーマに講演した。有馬氏は、教会の高齢化や礼拝出席者の減少が進む中で、「若い人たちが教会に来るようにしなければ、教会の明日はない」と語り、若者伝道のあり方を問い直した。

 冒頭、有馬氏は、教会が若者を招くためにバザーやコンサート、エンタメ系の企画に期待しがちな現状に触れた。しかし「世の中にはもっと面白いコンサートやエンタメが満ちている」と指摘。教会が若者と出会うためには、一時的なイベントではなく、若者の内面に触れる関わりが必要だと訴えた。

 特に強調したのは、教会とキリスト教主義学校との連携である。有馬氏によれば、全国のキリスト教主義学校には大学、短大、高校、中学、小学校などを合わせて約300校があり、約34万人の若者が学んでいる。これは福音に触れる大きな機会である一方、聖書科やキリスト教の授業が知識注入型にとどまり、かえって「キリスト教嫌い」を生んでいる場合もあると厳しく指摘した。

 有馬氏は、自身がICU高校で36年間、9千人以上の生徒にキリスト教概論を教えてきた経験を紹介。従来型の授業を「トップダウン型」と呼び、教師が一方的に聖書の知識を教え、暗記テストで評価するだけでは、生徒の心には届かないとした。これに対し、生徒の関心や問いから出発し、対話や作業を通して聖書のメッセージへ導く方法を「ボトムアップ型」と説明した。

 講演では、具体例として「人間の価値は何で決まるのか」を考えさせる授業を紹介。恋愛や大学受験を題材に生徒自身に短い小説を書かせ、学歴や成績、容姿、将来性で人間の価値や愛が決まるのかを問いかけた。その上で、「私はあなたが、あなただから好き」という言葉を提示し、人間を能力や所有物ではなく、人格として愛する聖書の人間観へとつなげたという。

 また、有馬氏は、生徒に自由作文を書かせ、点数をつけずに一人ひとりへコメントを返してきた実践も紹介した。評価を前提にすると、生徒は教師に受ける答えを書く。しかし点数をつけない場では、自分の悩みや物語を率直に語り始めると述べた。父を幼い頃に亡くした生徒が、授業を通して自分の悲しみに向き合い、授業後に一人で泣いたという作文も紹介し、教育とは知識を入れることではなく、内面にあるものを「引き出す」営みだと語った。

 最後に有馬氏は、小中高生の自殺が増えている現状にも触れた。子どもたちが点数や偏差値、学歴、能力だけで評価され、「自分はいなくてもいい存在ではないか」と感じる時代だからこそ、教会は若者の物語を聞く場になれると強調。「教会学校や中高生会、青年会の教師は、何を教えるかだけでなく、優れた聞き手である必要がある」と呼びかけた。

 若者を教会に招く鍵は、派手な企画ではなく、「ここでは自分の話を聞いてもらえる」と感じられる関係をつくることにある。有馬氏は「中高生は打てば響く。打ってほしいとも思っている」と語り、若者と真剣に向き合う教会の姿勢こそが、明日の教会を開くと結んだ。

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