教皇のAI警告に神学者ら反応 「バベルの塔」か「エルサレム再建」か 2026年6月10日

 教皇レオ14世が人工知能(AI)をめぐり発表した教書『マグニフィカ・ヒューマニタス』に対し、プロテスタント、正教会、カトリックなど各伝統の神学者らが相次いで反応している。教皇は同文書で、AI時代における人間の尊厳を強調し、人類は「もう一つのバベルの塔」を築くのか、それとも捕囚後のエルサレムを再建するのかという岐路に立っていると訴えた。「クリスチャニティ・トゥデイ」が6月1日に報じた。

 5月15日に発表された同教書で、教皇はカトリック信徒だけでなく、「すべてのキリスト教徒、善意あるすべての男女」に向けて呼びかけた。AIの発展を単なる技術革新としてではなく、人間とは何かを問う霊的・文明的課題として位置づけた点が特徴だ。

 一方、受け止め方は一様ではない。米サドルバック教会でテクノロジー分野を担当するジェイ・クランダ牧師は、AIへの過度な悲観は、人間が神のかたちに造られた存在であるという信仰をかえって過小評価しかねないと指摘した。AIは世界を破滅させるものではなく、賢明に用いれば豊かにする道具になり得るとの見方を示した。

 カリフォルニア州のフレンドシップ・バプテスト教会牧師ジャスティン・レスター氏は、教書が「技術は中立ではない」とし、権力集中を神学的問題として扱った点を評価した。特に、AIインフラを支える鉱物採掘やグローバル・サウスの搾取に言及したことを重視する。一方で、教会自身が過去に奴隷制や搾取構造に加担してきた歴史への反省が不十分だとも批判した。

 ダラス神学大学院のジョン・ダイアー教授は、近年の教皇文書における技術論を「楽観主義、悲観主義、現実主義」へと展開してきた流れの中で今回の教書を捉える。レオ14世の姿勢について、単純な技術礼賛にも悲観論にも陥らず、現実的にAIの影響力を見つめていると評価した。

 正教会の伝統に立つ生命倫理学者コンスタンティン・プシモポロス氏は、同教書を「人類史の決定的瞬間」における呼びかけと受け止めた。人間は神のかたちに創造された存在であり、いかなるアルゴリズムもその神聖さを代替できないと強調。人間がAIを自らの姿に形作る「共同創造者」となる以上、そこに善意、連帯、知恵を組み込む責任があると述べた。

 カトリックのノリーン・ハーツフェルド教授は、レオ14世がAIをめぐる「新たな奴隷制」に警鐘を鳴らしていると指摘した。低賃金で訓練データのラベル付けに従事する女性や若者、ハードウェアに必要な希少資源を採掘する労働者の存在を挙げ、AIの力が公益に十分資していない現状を批判していると解説した。

 同教書がテック業界の中心に届くかどうかは不透明だが、神学者らの反応は、AIをめぐる議論が技術や経済の領域にとどまらず、人間の尊厳、労働、権力、創造理解に深く関わる課題であることを浮き彫りにしている。

(翻訳協力=中山信之)

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