【この世界の片隅から】 気候変動と韓国キリスト教会 松山健作 2026年9月21日

 世界各地で、大雨や洪水をはじめとする自然災害が相次いでいる。私が司牧する地域のすぐ近隣でも線状降水帯が発生し、羽咋市や宝達志水町に大きな被害をもたらした。

 先日、韓国では、韓国基督教教会協議会(NCCK)気候正義委員会とキリスト教環境運動連帯が、2026年9月20日の「気候正義主日」(「世界気候行動の日」の直前の主日)に向け、信仰・礼拝・実践のためのガイドブック『気候正義主日資料集』を発表した。テーマには「聞け、地の嘆きを。行え、神の正義を」(ホセア書4:1~3)が掲げられている。

 NCCKは、気候変動を単なる環境問題ではなく「生命と正義、そして信仰の課題」と捉え、2021年に気候正義主日を制定した。韓国教会は1984年から「環境主日」を守ってきたが、現在の気候変動は、温室効果ガス排出の責任が最も少ない貧困層や社会的弱者に被害が集中する「不正義」を生み出していると捉えている。そのため、単なる自然保護を超えて「生命を救い、不正を正す気候正義」への転換が必要とされる。近年急速に進むAI・半導体・データセンターなどの先端技術開発に伴う膨大なエネルギー消費にも目を向け、誰も取り残されない「正義ある転換(Just Transition)」を目指すことが求められている。

 資料集では、各教会と信徒に向け、①気候正義主日礼拝を守ること、②現場の声に耳を傾けること、③教会内での対話、④カーボンフットプリント(製品・サービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通じた温室効果ガス排出量をCO2に換算した値)の点検、⑤日常の小さな実践(マイボトルの利用、節電、菜食など)、⑥気候行動・行進への参加、⑦祈りと連帯、という「七つの実践」を提示している。また、日々の暮らしに伴う排出量を可視化する「1.5℃ライフスタイルカーボンフットプリント」の活用を推奨している。

 この取り組みは、猛暑下の労働者、漁業者、気候弱者(独居高齢者や断熱性能の低い住居で暮らす人々)、石炭火力発電所の労働者、地域商店主、農家、次世代(子どもたち)といった多様な現場の苦悩を浮き彫りにし、教会自身のエネルギー消費のあり方を問い直すことを目的としている。行動を促す取り組みとして、2026年9月19日にはソウル中心部で「気候正義連合礼拝」が開催されるほか、ソウル市庁~崇礼門間で「919気候正義行進」が行われる予定だ。

 また、8月31日には「気候危機の時代、教会はどこに立つのか」をテーマに「気候正義アカデミー」が仁川の干潟で開かれ、気候正義の課題について分かち合われた。

 教会もまた資源を消費する側に回りがちだが、同アカデミーでは仁川の干潟で貴重な生態系に触れ、天然記念物のクロツラヘラサギをはじめとする野鳥に出会った。また、干潟が炭素を吸収・貯留し、酸素を供給する重要な役割を担う空間であることを学ぶ時がもたれた。

絶滅危惧種クロツラヘラサギ(仁川)

 さらに、自然保護地域に指定されていない地域の住民と連帯し、今後破壊されかねない自然を守る必要性についても考える機会となった。仁川の干潟周辺では、埋め立てや新都市建設が続き、仁川空港などの開発も進められてきた。私たちが快適な生活を求める一方で、多くの自然が失われ、その嘆きに耳を傾けられていない私たちの暮らしが問い直されている。

 NCCKは、地域と連帯することで自然の価値を実感し、教会も信仰に基づいて保全と「正義ある転換」を求めていけるよう、継続的に対話を重ねる必要性を訴えている。では、私たち日本の教会は、気候変動にどのように関心を示し、大地の嘆きを聞き、どのような行動を続けているだろうか。日本の教会にも、地域の自然の嘆きに耳を傾け、信仰に基づいて自然と生命を守る実践が求められている。

 資料集に示されている「気候正義主日共同祈祷文」の祈りは、こう結ばれる。「あなたの慈しみと愛は確かなものですから、私たちにその嘆きの声を聞かせてください。その声が私たちの心を揺さぶり、私たちが歩む道を立ち返らせてくださいますように。引き返して歩むその道端で、涙を流している者たちの手を掴んでください」

松山健作
 まつやま・けんさく 1985年、大阪府生まれ。関西学院大学神学部卒、同大学院博士前期課程、ウイリアムス神学館、韓国延世大学神学科博士課程修了(神学博士)。現在、日本聖公会京都教区司祭、金沢聖ヨハネ教会牧師、聖ヨハネこども園園長、『キリスト教文化』(かんよう出版)編集長、明治学院大学教養教育センター付属研究員、聖公会神学院非常勤講師など。

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