学校でのイスラム教の礼拝禁止は適法 独裁判所「宗教の自由」より「秩序や平穏」優先 2026年10月16日

ドイツのベルリン行政裁判所は10月15日、公立学校が校則で宗教的な祈りや儀式を禁止することは、学校内の宗教的対立を防ぐために必要な場合には認められるとの判決を下した。イスラム教徒の生徒が特に不利益を受けることは認めたものの、学校の秩序や平穏を守る必要性が上回ると判断した。宗教の自由と公教育における宗教的中立性のあり方をめぐり、ドイツ国内で議論を呼んでいる。
訴えられたのは、ベルリン市ミッテ区にある公立中等教育学校「ディースターヴェーク・ギムナジウム」。同校は47カ国出身の600人以上が学ぶ多文化的な学校で、生徒の多数をイスラム教徒が占める。校則では、学校の平穏を守るため、宗教的儀式を人前で目立つ形で行うことや、過激な政治的行為を禁じている。
この規定に対し、ドイツの人権団体「自由権協会」(GFF)が2025年10月、ベルリン州の反差別法に違反するとして提訴した。イスラム教では1日5回の礼拝が求められ、決まった時刻に体を動かして祈るため、校則が実質的にイスラム教徒の宗教実践を妨げていると主張した。
GFFによると、礼拝を禁止された生徒の中には、トイレや植え込み、ごみ箱の陰などに隠れて祈らざるを得ない者もいたという。団体側は、周囲の生徒に迷惑をかけない個人的な礼拝まで制限するのは過剰だとして、校則の見直しを求めていた。
これに対し、ベルリン行政裁判所第3部は訴えを棄却。禁止規定は特定の宗教だけを対象とするものではないが、イスラム教の礼拝には定められた身体動作が伴い、学校生活の時間帯にも行う必要があるため、イスラム教徒が特に不利益を受けることは認めた。
その一方、学校では以前から宗教を背景とする深刻な対立があり、他の生徒に特定の宗教的行動を強いる試みや、改宗の働き掛け、ヒジャブ(イスラム教徒の女性が着用する頭布)を着けない女子生徒への侮辱などがあったと指摘。宗教的な対立がさらに深刻化する具体的な危険があるとして、今回の禁止措置を正当化した。
学校側は、礼拝専用の部屋を設けるための空間や監督する教職員が不足しているとも説明。裁判所も、礼拝室の設置によって対立が解消されるとは限らず、かえって問題が持ち込まれる可能性があるとして、代替策にはならないと判断した。
判決後、校長は学校の方針が認められたことに安堵を示した。一方、GFFは判決に反発し、上級審で争う意向を表明した。判決はまだ確定しておらず、ベルリン・ブランデンブルク上級行政裁判所で審理を受けるには、まず控訴の許可を得る必要がある。
同校では2007年にも、イスラム教徒の男子生徒が休み時間に廊下で礼拝したところ、学校側から禁止され、裁判に発展した。
2011年11月、連邦行政裁判所は、信仰の自由によって生徒は原則として授業時間外に学校で祈る権利を持つと認定。その上で、宗教的対立が現実に生じ、学校の平穏を損なう具体的な危険がある場合には、礼拝を制限できるとの判断を示した。
ただし、同判決はすべての学校で礼拝を一律に禁止できるとしたわけではない。異なる信仰に接すること自体が他の生徒の宗教の自由を侵害するわけでもないとして、学校ごとの状況に応じた判断を求めていた。
今回の裁判は、個別の生徒による礼拝行為ではなく、学校の校則そのものが差別に当たるかどうかを争った点が異なる。GFFは2023年からベルリン市内の20校以上に対し、宗教活動の禁止や校内での母語使用の制限など、差別につながりかねない校則の是正を働き掛けてきた。多くの学校が規定を変更した一方、ディースターヴェーク・ギムナジウムは礼拝禁止を維持していた。
学校での宗教実践をめぐっては、欧米各国でも判断が分かれている。英国では2024年4月、ロンドンの公立中等教育学校「ミカエラ・コミュニティー・スクール」が導入した校内での礼拝禁止について、高等法院が適法との判断を示した。イスラム教徒の女子生徒が宗教の自由と平等法に違反すると訴えていたが、裁判所は、生徒間の結束や学校の秩序を維持するという目的に照らし、制限には合理性があると判断した。ただし、生徒に不利益が生じていることも認めている。
英国のイングランドでは、国の教育制度上、現在も多くの公立学校で日々の集団礼拝が求められており、その内容は原則として広い意味でキリスト教的な性格を持つ。一方、保護者には子どもを参加させない権利もある。学校が実施する礼拝と、生徒個人が自発的に行う祈りは、法律上も異なる問題として扱われている。
これに対し米国では、個人による自発的な祈りの保護が重視されている。米教育省が2026年2月に改訂した指針は、公立学校が特定の宗教活動を主導したり、生徒に祈りを強制したりすることを禁止する一方、休み時間や昼食時などに生徒が個人またはグループで祈る権利を原則として保障している。ただし、授業の妨害や他の生徒の権利の侵害につながる行為は制限できる。
フランスでは、国家と宗教の分離を重視する「ライシテ(非宗教性)」の原則に基づき、公立学校での宗教的中立性が厳格に求められる。生徒による目立つ宗教的標章や服装の着用が禁止され、他者への布教や宗教的圧力も認められない。一方、良心の自由そのものは保障されており、個人の内面的な祈りまで一律に禁止する制度ではない。
















