【書評】 『お寺に嫁いだ私がフェミニズムに出会って考えたこと』 森山りんこ

小中高とカトリック系の学校に通い、信者だったわけでもないのに聖書を読む授業もミサの時間も大好きだったという著者が、たまたま結婚した相手が僧侶だったために「家族」ではない「寺族」とされ、構造的な家父長制のもと「家事」と境目の曖昧な「仕事」に忙殺される中で、自分を喪失していく体験を克明に綴る。
「発信している妻たちは、みんなお寺に馴染んでうまくやっている。楽しそう、キラキラしている、認められてる。そんな姿ばかりが目に入ってくるのが苦しかった」「日本の仏教界の男性たちが、自分たちの生きやすいように作り出した、寺の家族経営という仕組みの中でそれに加担するようなことはもうしない。もううんざり。どうして私のすべてを寺に捧げなくてはいけなかったのか。……もうこれ以上こんな思いをする人を増やしたくない」
憲法やフェミニズム、『虎に翼』などに出会い、モヤモヤの正体を言語化できるまでには20年余の時間を要した。「男か女かでふるいにかけられない社会を、願うだけでなく、祈るだけでなく、変えていくのは、他でもない私たち一人ひとりだ」
浄土真宗の女性僧侶として、自らの離婚経験もふまえジェンダー平等を訴える西永亜紀子さんとの対談も収録。「誰もが平等に活躍できる環境を整えることは、仏教界全体の発展にもつながるはず」との言葉は、そのまま「教会のおくさん」を量産し続けてきたキリスト教界にも突き刺さる。
【1,980円(本体1,800円+税)】
【地平社】978-4911256176