【「親なきあと」をともに生きる~お寺と教会の〈語らい〉から始まる支援】 グリーフケアとの親和性――お寺を開く試み 今井 薫 2026年3月21日

 大切な人や物とお別れした時、人は深い悲しみや不安、喪失感を抱えます。頭では「時間が解決してくれる」「前を向かなければ」と分かっていても、心が追い付かず、日常の中で孤独や不安、心身の不調を感じることがあります。このような悲嘆のプロセスに寄り添い支えるのが、グリーフケアやグリーフサポートです。

 成福院では2020年6月より、グリーフケア「寺カフェ」を毎月第3水曜日の午後2時~4時に開いており、「こころのケアの会」を22年5月に設立しました。グリーフケアを学んだ5人のスタッフが、死別だけに限らずペットロスや離別の悲しみ、認知症の苦しみなどのお話を聴かせていただいています。

 「寺カフェ」だけでなく「歌と法話」や、お寺と教会の親なきあと相談室の「親あるあいだの語らいカフェ」を開催する中で、お寺に来られる方は、何か悲しみを背負っておられる方が多いと感じています。その原因である喪失のグリーフケアは、お寺と非常に高い親和性を持っていると思います。

 お寺は古くから「いのち」と「死」に向き合ってきた場所です。葬儀や法事などの先祖供養を通して、亡くなった人を社会の中から切り離すのではなく、今を生きる私たちとの関係性の中に位置づけてきました。これは、喪失を「忘れるべきもの」「乗り越えるべきもの」と捉えるのではなく、悲しみとともに生きていくというグリーフケアの考え方と重なります。

 また、お寺という空間が持つ力もあります。境内の静けさ、読経の声、鐘の音、歴史の持つ時間の流れは、張りつめた心を、そっと緩めてくれます。医療機関やカウンセリングルームでは「話さなければならない」「整理しなければならない」という無言の圧力を感じる人がいますが、お寺には、ただそこにいるだけで許される雰囲気があります。この「何者かにならなくてもいい場所」であることが、悲嘆の中にいる人には大切だと考えます。

「マルシェdeグリーフケア」で開会のあいさつをする筆者(左)

 住職は、教えを説く存在であると同時に、長い歴史の中で人の苦しみや迷いに耳を傾けてきた聴き手でもあります。答えを急がず、評価や助言を押しつけることなく、ただ語りを受け止める姿勢は、グリーフケアにおいて非常に重要です。仏教の言葉や死生観が悲しみを言葉にする手掛かりになることもあれば、言葉を交わさず、ただ一緒にいる時間そのものが心の支えになることもあります。

 現代社会では、悲しみを長く抱えることは弱さと捉えられがちです。しかし本来、悲嘆は人それぞれ深さや内容が違うように、比べることはできません。心身の変調をそのまま放っておくとうつ病になって、最悪の場合は自死してしまう人もおられます。お寺は「まだ悲しんでいい」「立ち止まっていい」と、肯定できる場所として社会の中で重要な役割を果たすことができます。

 お寺の役割は、いのちや死生観について考えたり論じたりする場を提供すること、生きているうちからの関わりや残された時間をともに歩むこと、枕経に始まる通夜・葬儀、7日ごとの法要のように供養に段階的に関わっていくことにあります。

 このように、いのちと死を見つめ、人の悲しみに寄り添ってきたお寺だからこそ、これからの時代に必要とされる、グリーフケアの拠点とならなければいけないと考えます。お寺と教会の親なきあと相談室の活動も、お寺とグリーフケアとの高い親和性に根差して続けていければと思っています。

 いまい・かおる 真言宗大覚寺派成福院(兵庫県宝塚市)寺族。こころのケアの会代表。終活カウンセラー協会認定講師、日本グリーフ専門士協会マスター。臨床傾聴士(上智大学グリーフケア研究所認定)、臨床瞑想法リーダー。

*問い合わせは同相談室(https://otera-oyanaki.com/)まで。

【「親なきあと」をともに生きる~お寺と教会の〈語らい〉から始まる支援】 多職種連携の実際――公的機関が関心を持つ理由 稲前恵文 2026年3月11日

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