米テキサス州 公立学校に聖書含む必読リスト導入へ 公教育めぐる議論再燃 2026年7月5日

 米南部テキサス州で、公立学校の読書教材に聖書物語や聖書本文を含める新たな必読リストが承認され、宗教と公教育をめぐる議論が再燃している。米紙「レリジョン・ニュース・サービス」(RNS)によると、州教育委員会は6月末、500万人を超える公立学校の児童・生徒を対象とする新たな読書リストを9対5で承認。導入は2030年度から段階的に始まる見通し。

 リストには、聖書に基づく物語のほか、シェイクスピア、チャールズ・ディケンズ、ジェーン・オースティンらの作品も含まれる。米国では近年、教室への「十戒」掲示義務化など、保守派主導で公教育に宗教的要素を取り入れようとする動きが相次いでいる。支持者は、聖書が米国の歴史や文化、文学を理解する上で不可欠だと主張する。一方、批判者は、特定宗教、特にキリスト教を公立学校で優遇することになり、信教の自由や政教分離に反すると懸念している。

 この問題について、作家・文学研究者のカレン・スワロー・プライア氏は7月1日、RNSへの寄稿で、「問うべきは、聖書を必読にすべきかどうかではなく、なぜ必読にするのかだ」と指摘した。

 プライア氏は、文学や文化を深く理解するために聖書の主要箇所を学ぶこと自体には意義があるとする。世界文学や美術、思想、歴史において、聖書の影響を抜きに理解しにくい作品は少なくない。その意味で、聖書を「文学」「文化的背景」として客観的に扱うことは、教育上の価値を持ち得る。

 しかし、目的が別にあるなら話は異なる。同氏は、聖書を教える動機が、特定宗教を他宗教より上位に置くことや、キリスト教ナショナリズムの政治的意図を進めることにあるなら、イエスに従おうとするキリスト者こそ警戒すべきだと論じる。聖書は、他者との文化戦争の武器として振りかざすものではなく、まずキリスト者自身と教会の罪を照らすものだからだ。

 またプライア氏は、米国社会で深刻化する読解力の低下にも目を向ける。聖書を読ませるか否か以前に、そもそも子どもや大人が十分に読めているのかという問題がある。読み書きの力は、貧困、雇用、司法、世代間格差にも関わる。キリスト者が「み言葉の民」であるなら、読解力を育てることは隣人愛の実践でもあるという。

 宗教を公共教育から排除するか、逆に特定の宗教的価値観を押し出すかという二項対立ではなく、宗教的伝統を文化的・歴史的教養としてどう教えるのか、また信仰教育と一般教育の境界をどう見極めるのかが問われている。

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