【映画評】 王道かつ絶滅危惧種なアクション 『シェルター』 2026年8月15日

 過去を封印したマイケル・メイスンは人との接触を避け、スコットランド沖の孤島で隠遁生活を送って10年。ある日、元同僚の姪ジェシーを海難事故から救ったことで当局に探知され、逃亡した元エリート工作員だと知られてしまう。MI6と政府の非公式組織の両方から追われる身となり、巻き添えとなったジェシーを守りながら、マイケルは必死の逃避行を繰り広げる。

 ジェイソン・ステイサムの定番設定となっている「引退してひっそり暮らす元エリート工作員」ものの一つ。しかし派手なアクションやユーモアを排し、リアリティに重きを置いた硬質な作りで、これまでの作品群とは一線を画す。CGやスタジオ撮影を極力使わず、ロケ現場で本物のアクションを撮影することにこだわったという。その甲斐あってか、冒頭の海難事故のシーンは圧巻だ(一部は巨大プールで撮影している)。舞台が絶海の孤島から農場、市街地へとテンポよく移動し、それぞれに見せ場があるところにも、作り手の並々ならぬ意気込みが感じられる。

 本作はおよそ60年代から続く、スター俳優を看板にした娯楽アクション映画の系譜に連なっている。ステイサムは2000年代にブレイクしたスター俳優の代表格であり、マッチョな白人男性によるヒロイズムを今なお体現する存在だ。しかし現在、彼ほどのカリスマ性を持つアクション・スターの後継が生まれていないのは、昨今の映像コンテンツの多様化と「推し活」文化の細分化、それに伴う制作現場の構造的変化と無関係でない。ネット配信の加速によってコンテンツ過多となった今、スター俳優を前面に押し出した大作映画でさえヒットしにくくなっている。くわえて、生成AI技術が映像制作の現場を根本的にくつがえす時期は既にきている。個々の俳優たちの存在意義だけでなく、映画制作のプロセスそのものが、かつてないほど揺さぶられているのだ。

 もちろんそこにはポジティブな可能性もある。これまで世界を救うのはマッチョな白人男性と相場が決まっていたけれど、その道が様々な人種や性別、属性の人々にも開かれつつあると言えるからだ。本作では一方的に守られるだけだったジェシーのような少女が、今後の映画では世界を救うようになるかもしれない。その点で『シェルター』は、王道でありながら絶滅危惧種でもあるという、昨今の映画界のねじれを端的に表した作品と言える。

(ライター 河島文成)

8月28日(金)全国ロードショー
配給:キノフィルムズ

©2026 Fire Hawk Productions Limited. All Rights Reserved.

映画・音楽・文化一覧ページへ

映画・音楽・文化の最新記事一覧

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘