米大学でカトリック改宗者急増 若者が求める「伝統」と共同体 欧州でも受洗増 2026年8月27日

米国の大学や都市部のカトリック教会で、若者を中心に洗礼や教会加入を希望する人が急増している。ハーバード大学では今春、過去最多の学生・教職員らがカトリックとなり、南カリフォルニアの大学教会でも成人入信過程への参加者が大幅に増加。フランスやベルギーでも若者の受洗が顕著に伸びている。長期的な世俗化が続く欧米で、SNSや社会の分断に疲れた若者の一部が「伝統」「共同体」「意味」を求めて教会に向かっている可能性が指摘される一方、社会全体の「信仰復興」と判断するには慎重さも必要だ。
米「EWTNニュース」が8月25日報じたところによると、ハーバード大学に隣接する聖パウロ・カトリック教会では今春、過去最多となる85人がカトリックとなり、このうち45人が同大の学生または教職員だった。次の養成課程にもすでに65人が登録している。大学付き司祭のナサニエル・サンダース神父によれば、学生のミサ出席も近年10~20%増加。日曜ミサには平均約300人の学生が集まり、数年前の約200人から増えた。
サンダース神父はハーバード特有の現象ではなく、「若者の間でより広い傾向が起きている」とみる。約30の聖書研究グループを大学宣教団体「FOCUS」と運営し、運動部の学生が仲間を誘って聖書を学ぶ例も多いという。カトリックとなる学生には、文化的にはカトリック家庭で育ったものの教会生活を経験しなかった若者と、福音派やメガチャーチ系のプロテスタントから移る若者が目立つ。
同日、英紙「ガーディアン」も米西海岸の大学で進む同様の変化を詳しく報じた。南カリフォルニア大学(USC)に隣接するアワー・セイバー教会では今年16人が受洗し、成人入信過程(OCIA)には69人が参加。前年より57%増えた。ミサ出席者が増え、別室で映像中継することもあるという。カリフォルニア大学サンタバーバラ校近くの聖マルコ大学教会でも、今年の入信者は過去最多の56人に達した。
目を引くのは、若者たちが必ずしも家族や結婚相手に促されて教会に入っているわけではない点だ。同紙の取材に対し、聖マルコ大学教会のライアン・ソーントン神父は、かつて多かった家族からの圧力やカトリック信者との結婚といった動機が減り、現在はより「能動的な選択」になっていると説明した。
背景として浮かぶのが、孤独や世界情勢への不安、デジタル文化への疲労だ。USCで働く24歳の女性は大都市で感じた孤独や社会への不安から信仰へ向かい、サンタバーバラ校の20歳の学生は戦争、不正義、社会の分断を目の当たりにし、より確かなよりどころを求めたと証言した。教会側も、短い動画やSNSが支配する生活に対して、長い歴史を持つ典礼や祈り、直接顔を合わせる共同体が一種の「対抗文化」として機能しているのではないかと分析する。
同時に、若者が伝統を求めることと、厳格な宗教への回帰は必ずしも同じではない。「ガーディアン」が紹介した50歳の男性は、若いころ「地獄」を強調する説教に反発して教会を離れたが、現在の教会で愛や共同体を前面に出すメッセージに触れ、再び信仰生活に入った。古い典礼や教理への関心と、受容的な共同体への希求が並存していることも、今回の動きの特徴と言えそうだ。
地域レベルでは数字にも大きな変化が表れている。ロサンゼルス大司教区で2026年の復活祭に洗礼や秘跡を受ける準備をした求道者・志願者は8598人。2023年の3462人、24年の3596人、25年の5587人から急増した。教会関係者は、コロナ禍の孤立、米教会が進めた「聖体復興運動」、混乱する社会の中での「霊的な飢え」など複数の可能性を挙げている。
カトリックの祈りのアプリ「Hallow」が全米約60大学から集めたデータでも、2024~25年度から25~26年度にかけてOCIA参加者は合計で87.6%増加。大学ごとの増加率を平均すると115%に上った。USCだけでなく、アリゾナ州立大学、イリノイ大学、オクラホマ大学などでも100人前後かそれ以上が入信準備に参加している。
全米規模でも増加の兆候はある。同アプリが140教区から集めた別の調査では、2026年にカトリック加入を準備する人は前年より平均38%増えた。対象教区には全米カトリック人口の86%が含まれる。米カトリック教会の調査機関CARAのマーク・グレイ氏は、成人の洗礼と他教派からの正式加入は2020年以降毎年増えていると指摘する。
ただし、これを直ちに「史上空前のリバイバル」と呼ぶことはできない。グレイ氏の試算では2026年の成人加入者が11万~12万人規模に達する可能性があるものの、2000年には17万2千人を超えていた。むしろコロナ禍を含む近年の数字が歴史的に低かった面もある。2026年の正式な全国統計が公表されるのも来年以降となる。
さらに顕著なのがフランスだ。仏司教協議会によると、2026年の復活祭に洗礼を受けた成人は1万3234人で、前年から28%増加した。2016年の4124人から10年間で3倍以上となった。11~17歳の青年も8100人を超え、成人と合わせると2万1千人以上が受洗した。成人では18~25歳が最も多く、2020年にはその倍近くいた26~40歳を逆転している。学生が占める割合も大きく伸びている。
フランスの数字は、米国で語られる「意味への渇望」が単なる印象論ではないことも示唆する。同司教協議会が今年、60教区の求道者1450人を調査したところ、40%が病気や身近な人の死などの「試練」を経験したことを、洗礼を求める契機として挙げた。約3分の1は強い霊的体験を経験していた。一方、宗教系インフルエンサーなどSNSの影響を挙げた人は11%にとどまった。
宗教的背景にも変化がある。2026年のフランスの成人求道者は45%がキリスト教的伝統を持つ家庭の出身だった一方、「宗教なし」が19%、宗教的背景が「不明」が27%。両者を合わせるとキリスト教的伝統を持つ層とほぼ同規模になった。親から受け継いだ信仰を再開するだけでなく、宗教文化をほとんど持たずに育った世代が自らキリスト教を選ぶケースが増えている。
ベルギーでも2026年に洗礼を希望した青年・成人は689人で、前年の534人から29%増加。2016年の229人と比べると約3倍になった。
イングランド・ウェールズでも、カトリック教会で教理教育を受ける求道者・志願者は2024年に6276人に達し、他教派から正式にカトリックとなった人も3024人だった。教会内部で新たに信仰を選ぶ人の増加が観察されている。
一方、個々の教会で起きている変化と社会全体の動向は分けて考える必要がある。米ピュー・リサーチ・センターの大規模調査では、米国の18~24歳で、別の宗教または無宗教の家庭からカトリックへ移った人は1%なのに対し、カトリックとして育ちながら現在は離れている人は12%。キリスト教全体でも、同世代の5%が新たにキリスト教徒となったのに対し、26%はキリスト教から離れている。若者全体では今なお「入る人」より「離れる人」の方が多い。
英国では、この点を示す象徴的な出来事もあった。若者の礼拝出席が急増したとして2025年に注目された聖書協会の調査「静かなリバイバル」は、調査会社YouGovがデータに問題があったことを認め、2026年3月に撤回された。無作為抽出による英国の別の大規模調査では、18~34歳でキリスト教徒を自認する割合は2018年の37%から25年には28%へ低下。月1回以上礼拝に出席する若年キリスト教徒の割合も18年の8%から24年には6%となっている。
ニューハンプシャー大学の宗教社会学者ミシェル・ディロン氏は「ガーディアン」に対し、個々の教会や教区で確認されている増加は「実在する、観察可能な変化」だと指摘した。その変化が本格的な潮流となったかを判断する鍵は、受洗後も若者たちが継続して教会生活に参加するかどうかだという。
「無宗教」が世代を超えて定着する一方、その環境から少数の若者が自ら宗教を選び始める――。現在の欧米で起きているのは、かつてのような社会全体のキリスト教回帰というより、世俗化が進んだからこそ生まれた「選択される信仰」の増加なのかもしれない。孤独、戦争、分断、将来への不安、そして絶え間なく情報が流れ込むデジタル社会の中で、若者の一部が古い典礼、聖書、祈り、顔の見える共同体に新しさを見出している。















