北米聖公会トップが性的非行などで教会裁判へ 現職大主教で初 2026年9月5日

 北米聖公会(ACNA)の最高指導者スティーブン・ウッド大主教(62)に対する教会裁判が9月7日、米サウスカロライナ州チャールストンで始まる。按手時の誓約違反、教会権力の乱用を含む「スキャンダルまたはつまずきとなる行為」、性的非行の3件が教会法上の訴追事項となっている。2009年に発足したACNAで、現職大主教が教会裁判にかけられるのは初めて。米「レリジョン・ニュース・サービス」(RNS)が9月3日に報じ、ACNAも裁判日程を公表している。

 訴追の発端となったのは、ウッド氏が長年牧会してきたサウスカロライナ州マウント・プレザントの聖アンデレ教会での言動をめぐる告発だった。元児童ミニストリー責任者の女性は、ウッド氏が2021年ごろから不適切な接し方をするようになり、教会資金から3千ドルを超える金銭を渡したほか、24年4月には執務室でキスをしようとしたと訴えている。「ワシントン・ポスト」が25年10月に詳報した。

 その後、別の女性も、ウッド氏から不快に感じる状況へ誘われたり、飲酒に誘われたりしたと訴えたほか、元教団広報責任者からは、教団の規律手続きに不適切な影響を及ぼそうとしたとの申し立ても出された。正式な申し立ては聖職者、信徒ら10人以上の署名を得て提出された。ウッド氏は主要な疑惑を否定しており、後から加えられた性的ハラスメントの訴えについてはコメントしていない。現段階で、いずれの訴えについても有罪が認定されたわけではない。

 ACNAの調査委員会は昨年12月、3件について裁判に付す「相当な根拠」があると判断した。教団の「主教裁判所」は3人の主教、2人の聖職者、2人の信徒からなる7人で構成される。今回の裁判は一般には公開されず、7~12日の日程で行われ、必要な場合は21~26日に延長される。判決は審理終了後、最長101日後までに示される可能性があるという。

 ウッド氏は24年6月に大主教に選出され、同年10月に就任。疑惑が表面化した後の25年11月3日、自発的に職務を離れると発表した。その後、聖職者140人以上から、自ら復帰できる「休職」ではなく正式な職務停止を求める声が上がり、同月16日、教会法に基づいて聖職務を停止された。現在も大主教の地位にはあるが職務停止中で、ジュリアン・ドブス主教が教団運営を担っている。

 ACNAは、同性関係、LGBTQの聖職者、聖書解釈などをめぐって米国聖公会やカナダ聖公会と対立した保守派の教区・教会などによって09年に結成された。現在、米国、カナダなどに1千を超える教会、13万人以上の信徒を擁するとしている。

 ただし、カンタベリー大主教座との交わりを加盟の基準とする世界的なアングリカン・コミュニオンの正式な加盟教会ではない。一方、保守派聖公会の国際ネットワーク、GAFCON(Global Anglican Future Conference)はACNAを北米の「正統的」管区として認め、ウッド氏をアングリカン・コミュニオンの首座主教の一人として位置付けてきた。

 今回の裁判は、米国内の一教団の問題にとどまらず、同性婚などをめぐって既存の聖公会指導部を批判し、「聖書的正統性」を強調してきた世界的な保守派聖公会ネットワークにとっても、指導者の倫理と説明責任が問われる案件となる。

 ACNAでは近年、主教らをめぐる不祥事と虐待対応のあり方が相次いで問題となっている。24年にはトッド・アトキンソン元主教について、複数の女性との不適切な関係や教会権力を利用した操作的な行為など4件を教会裁判所が認定し、聖職を剥奪した。

 またアッパー・ミッドウェスト教区のスチュワート・ラッチ主教は、教区内で起きた児童性的虐待への対応などをめぐって教会裁判にかけられた。昨年12月、証拠が教会法上必要な水準に達しなかったとして全件無罪となったものの、裁判所自身が、被害者が受けた深刻な苦痛と教団・教区における制度上の不備を認め、今後のセーフガーディング改革に反映させる必要性を指摘した。

 教団運営を担うドブス主教は裁判を前に、「若い管区は困難で居心地の悪い季節のただ中にある」と信徒に書簡を送り、関係者のために祈りと断食をささげるよう呼びかけた。ACNA公式サイトも、「真実が明らかにされ、正義が行われる」よう祈る文言をトップページに掲載している。

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