英反移民デモ参加者、教会に乱入 「英国的価値」めぐり牧師追及 欧州で教会と排外主義の緊張 2026年9月3日

英国イングランド北部ドンカスターで8月29日、反移民デモの参加者約15人が英国国教会のドンカスター・ミンスターに入り、主任牧師のリチャード・フリス氏を取り囲み、「英国的価値を支持していない」などと追及する騒ぎがあった。英「プレミア・クリスチャン・ニュース」が9月2日に報じた。デモ主催者はその後、教会に入った参加者の行為を批判し、フリス氏への謝罪を表明した。
反移民団体「Unite the Right UK」の参加者は、「送り返せ」「子どもを守れ」などと書かれた横断幕を掲げて市中心部を行進。警察は反人種差別団体「Stand Up to Racism」などの対抗集会と分離するため、同ミンスター前の広場に誘導した。デモの演説中に教会の鐘が鳴ると、一部の参加者が演説を妨害するため意図的に鳴らしたと主張し、教会内に入った。
公開された映像では、参加者の1人がフリス氏に対し、「あなたはキリスト教の説教者のはずだ。それなのに英国的価値も英国も支持していない。この国が侵略されても構わないのか」と迫っている。フリス氏は鐘について、「土曜日は鐘つきの練習日」と説明。警察官も、デモ主催者には事前に鐘が鳴る時間を伝えていたという。フリス氏はデモに先立ち、反人種差別側の集会に参加していた。
ただし「Unite the Right UK」のスティーブ・ダンド氏は、教会内に入った人々は団体を代表するものではないとして行為を否定。「神の家に入って牧師と対決するのは間違っており、決して起きるべきではなかった」と述べ、直接謝罪する意向を示した。
ドンカスター・ミンスターの公式サイトによると、フリス氏は同教会の牧師で、ドンカスター市中心部の宣教も担う。同教会は「すべての人を歓迎し、神の愛を表現する」ことを掲げている。
今回の騒動の背景には、移民・難民問題をめぐる英国社会の分断とともに、「英国的価値」や「キリスト教」を排外的なナショナル・アイデンティティーと結び付ける動きと、それに距離を置く既成教会との緊張がある。
英国国教会の主教7人は今年2月、イングランド旗「聖ジョージ十字」について共同声明を発表し、キリスト教的伝統に根差した「すべての人のための一致」の象徴として用いるよう呼びかけた。同時に、キリスト教の象徴を他者への「威圧」のために利用することを戒め、移民問題については異なる意見を尊重しながら成熟した議論を行う場として教会が役割を果たすべきだとした。
5月にはカンタベリー大主教サラ・ムラリー氏が、ヘイトクライムや敵意が高まる社会で「見知らぬ人を隣人にする」ことを訴え、移民の社会統合は「かつてないほど緊急」と強調。7月の英国国教会総会でも、キリスト教右派の台頭や難民申請者を収容するホテル周辺での騒乱が議題となり、教会を「声を上げられない人のための場所」であると同時に、異なる背景の人々が出会い偏見を乗り越える場と位置付けた。
こうした対立は英国に限らない。9月6日に州議会選を控えるドイツでは、反移民政策を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)と教会との対立が鮮明になっている。中部ドイツ福音主義教会のフリードリヒ・クラマー監督は、「わたしは旅人であったとき、宿を貸してくれた」との聖書の言葉を挙げ、「外国人を追放しようとする政党は教会の価値観と両立しない」と指摘。ドイツ司教協議会会長のハイナー・ヴィルマー司教も2日、「移民は邪魔者ではない」と述べ、隣人愛と人間の尊厳を強調した。
イタリアでも、政府が移民・難民への規制を強める中、イタリア司教協議会移住者委員会のジャンカルロ・ペレゴ大司教は今年2月、移民政策が「人より先に国境を守る」方向に傾いていると批判し、教会は「壁を築こうとする場所で橋を架け続ける」と表明。教皇レオ14世も7月、地中海のランペドゥーザ島を訪れ、移民・難民への「残酷な扱い」を批判するとともに、地中海で相次ぐ犠牲に警鐘を鳴らした。
欧州全体では6月12日、EUの「移民・庇護協定」が全面適用された。欧州教会移民委員会(CCME)などのキリスト教諸団体は、国境管理や移民政策そのものの必要性を否定してはいないものの、強制送還や収容を重視する政策が人権と人間の尊厳を損なうとして警戒を強めている。EU司教協議会委員会(COMECE)も、加盟国には国境を管理する正当な責任があると認めた上で、弱い立場にある人々の基本的人権を損なってはならないと訴えている。















