英SPCK、米アードマンズを買収 キリスト教出版の大型再編 2026年9月6日

英国最大のキリスト教出版社SPCKグループは9月2日、米国の老舗神学出版社ウィリアム・B・アードマンズ・パブリッシングを買収したと発表した。両社を合わせた既刊書は5千点を超え、神学、聖書学、一般キリスト教書、児童書などを英米双方で展開する大型出版グループとなる。買収額など契約条件は公表していない。SPCK、アードマンズ両社と米「パブリッシャーズ・ウィークリー」が報じた。
SPCK(Society for Promoting Christian Knowledge)は1698年創立。英国で最も歴史のある出版社の一つで、2015年に福音派系出版社インターヴァーシティ・プレス(IVP UK)と統合し、21年には児童書などに強いライオン・ハドソンを買収してきた。今回のアードマンズ買収についてSPCKのサム・リチャードソンCEOは、過去の統合経験を生かし、規模のメリットを著者や読者に還元すると説明している。
一方、米ミシガン州グランドラピッズに本拠を置くアードマンズは1911年創業。聖書学、組織神学、教会史などで世界的に知られ、N・T・ライトをはじめ幅広い神学者・聖書学者の著作を刊行してきた。社会、政治、人種、医療倫理などを扱う出版にも早くから取り組み、特定教派に限定しない神学出版社として評価を得てきた。
今回の特徴は、買収後も「アードマンズ」の名称、編集部、スタッフを残す点にある。英国やその他の国際市場ではSPCKがアードマンズ書籍の販売、マーケティング、流通を担い、米国とカナダでは逆にアードマンズがSPCKグループの書籍を扱う。両社は編集方針を大きく変更しないとしている。
「パブリッシャーズ・ウィークリー」によると、両社はこれまでも著者や版権を共有してきた。統合後は世界市場で同一ISBNを使用するなど、刊行・販売をより一体化する構想もあるという。アードマンズのアニタ・アードマンズ社長兼発行人は退任し、新設する非営利組織「アードマンズ財団」の代表に就任。新社長兼発行人にはウィリアム・バーグキャンプ氏が就く。
背景には、専門性の高いキリスト教書を単独の出版社が制作、宣伝、在庫管理し、国内外へ流通させ続ける難しさがある。一方、SPCKは24年には売り上げを前年比20%伸ばしたとしており、今回の買収を縮小のためではなく、英米市場と海外展開を強化する成長戦略と位置付ける。
こうした再編は、日本のキリスト教出版とも無関係ではない。SPCKが刊行するN・T・ライトの「New Testament for Everyone」シリーズは、日本でも教文館から『N・T・ライト新約聖書講解』として全18巻の邦訳刊行が進められている。海外出版社の版権管理や流通体制の再編は、将来的に日本の出版社による翻訳出版にも影響する可能性がある。
英米と日本では出版市場の規模も教会人口も大きく異なり、今回のSPCKによる買収と日本国内の事業整理を単純に比較することはできないが、編集ブランドや出版使命を残しながら、経営、流通、デジタル基盤を別の形で共有するという方向には共通点もある。
アードマンズ側は今回の決定について、「次の100年」のための選択と説明した。小規模で専門性の高い出版社が、それぞれの独自性を守りながら、制作・販売・流通をどこまで共同化できるか。世界的なキリスト教出版の大型再編は、市場縮小と世代交代に直面する日本の文書伝道にも共通する問いを投げかけている。















