「若者は教会を知らない」のか 米誌がZ世代像問い直す 2026年9月19日

 「Z世代は教会について何も知らない」のではない。「私たちが、彼らの知っていることについて話したがらないだけだ」――。米キリスト教誌『クリスチャン・センチュリー』は8月28日、若者と教会の関係を問い直すエリザベス・パーマー氏の論考「What Gen Z knows about the church」を掲載した。同誌のシニアエディターを務めるパーマー氏は、若者を「教会を知らない世代」として扱う前に、彼らが教会をどのように見ているのかに耳を傾ける必要があると論じている。

 同稿は、牧師や神学校教師が現代の教会指導者に宛てて手紙を書くという同誌の連載「Dear Pastor」の一篇。パーマー氏は、Z世代の多くが組織宗教から距離を置きながらも、超越的なものへの関心まで失っているわけではないとの見方から議論を始める。

 若者が知っている教会の姿として同氏が挙げるのは、決して好ましいものばかりではない。教会が自らの価値より政治的な同盟や経済的安定、組織維持を優先してきたこと、権力をめぐる問題や構造的な不正に十分向き合わず、失敗を認めるより隠そうとしてきたこと――。いずれも同氏自身による批判的評価だが、だからといって「本当の教会はそんなものではない」と退けるだけでは、若者との距離は埋まらないとする。組織宗教から無視され、誤解され、時には傷つけられた世代に、内部の論理を理解するよう求めることはできないという。

 同氏は問題を「どうすればZ世代を教会へ戻せるか」というマーケティングの問いにしない。ルターの罪理解を引きながら、人間は罪によって自らの姿を見る目そのものを曇らされるとし、教会もまた、自らの問題を正しく認識できていない可能性を指摘する。

 そして最後には、問いそのものを反転させる。教会が「Z世代をどう変えるか」と考える前に、「Z世代の中にある善を、教会は見ようとしているか」。若者を教勢回復のために解決すべき「問題」として見る姿勢こそ、問い直される必要があるという。

 これは米国だけの問題ではない。日本でも2025年3月、庭野平和財団が「若者の宗教性はどう涵養されるのか、されないのか。どこで、誰に。」をテーマに公開シンポジウムを開催。キリスト教の事例を報告した日本バプテスト連盟札幌バプテスト教会の石橋大輔氏は、「教会には若者がいない」と嘆く前に、そもそも教会が誰を「若者」と呼んでいるのかを問い直した。

 石橋氏によれば、日本の教会で若者はしばしば「次代の担い手」「新しい風をもたらす存在」と呼ばれる。一見好意的な表現だが、それは若者を「今の教会」の主体ではなく、「将来の教会」のために期待される存在として位置付けることにもなり得る。実際、同氏が仕えた教会では、若者向けの礼拝やプログラムを用意したものの、ある青年から「青年会をどう良くするかだけを考えるのには飽きた」と訴えられたという。若者への「配慮」のつもりで別枠を設けることが、教会の本質的な意思決定や働きから彼らを遠ざけていたのではないかと振り返る。

 日本社会では、宗教団体そのものへの警戒感も無視できない。築地本願寺が2023年、全国の18歳~70代1600人を対象に実施した調査では、39.7%が直近1~2年で「宗教への不信感が高まった」と回答。特に10~40代女性では約半数に達した。安倍晋三元首相銃撃事件後という時期的背景を考慮する必要はあるものの、若い世代と宗教団体との間にある心理的距離を考える一つの材料となる。

 パーマー氏は論考の最後で、教会が「ナザレから何か良いものが出るだろうか」と若者に問わせるのを待つのではなく、教会の側が「Z世代から何か良いものが出るだろうか」と問い直すことを促す。若者をどう教会へ連れ戻すか。その問いより先に、若者の目を通して教会自身の姿を見ることができるか。米国から投げ掛けられた問いは、日本の教会にとっても軽くない。

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