〝経営の神様〟に見る「隣人愛」 松下幸之助と聖書の接点探る 2026年10月16日

パナソニック(旧松下電器)創業者、松下幸之助(1894~1989年)の経営哲学と聖書の教えを比較する「第1回松下幸之助セミナー」が10月15日、お茶の水クリスチャン・センター(東京都千代田区)で開かれた。私設松下幸之助資料館(川崎市)の田宮卓館長が「聖書の言葉と松下幸之助の共通点」と題し、「隣人愛」と「人知れず行う善行」を軸に講演した。自身はキリスト者ではないが、聖書を学び、松下の思想との共通点を見出したという。
田宮氏は、祖父母が松下の邸宅の隣に住んでいたことをきっかけに関心を持ち、関連書籍1018冊を通読。元側近や社員への聞き取りも続けてきた。松下が交流した宗教者の一人として、カトリック信徒の経済学者、飯島幡司氏にも言及。松下自身は特定の宗教に帰依せず、仏教やキリスト教をはじめ多様な宗教者から学んでいたと説明した。
田宮氏が最初に取り上げたのは、「隣人を自分のように愛しなさい」という聖書の教えと「善いサマリア人」のたとえ。「隣人」は身近な人に限らず、自分以外のあらゆる人を指すと理解し、「自分も尊い存在だが、相手も尊い」という松下の人間観に通じると述べた。民族や立場の違いを超えて他者を思いやる精神が、社会の対立や紛争を乗り越える上でも重要だと指摘した。
その実践例として、松下が社員の家族構成や誕生日にまで気を配り、病気になった社員や販売店関係者を見舞い、遺族の生活も案じていたとする証言を紹介。PHP研究所で松下に仕えた岩井虔氏の著作『松下幸之助 元気と勇気がわいてくる話』を引き、松下が「愛される仕事」をすることと、そのための奉仕を重視したと説明した。また、松下の商売の原点は、利益の追求よりも人々に喜んでもらうことにあったと強調。一方で、事業で利益を上げ、税金を納めることも社会への責任と考えていたと述べた。
続いて、マタイによる福音書の「右の手のすることを左の手に知らせてはならない」という教えと、松下が人知れず行ったとされる支援を重ねた。松下病院の入院患者全員に毎月、果物と「早く良くなってください」と記された松下名義の見舞いの手紙が届けられていたという元社員の回想を紹介。この話は長年の側近にも知られていなかったといい、田宮氏は公になっていない寄付や援助が少なくないとの見方を示した。
田宮氏が館長を務める私設松下幸之助資料館は、川崎市高津区の自宅を改装して開設した施設。「松下幸之助の志を実現し、さらに進化させる」を理念に掲げ、関連書籍や資料5千点以上(電子含む)を収集、所蔵。松下を直接知る関係者への聞き取りなどを通じて、その思想や経営哲学を研究・発信している。パナソニックやPHP研究所などとは独立して運営されている。
次回のセミナーは11月17日、同会場で開催される。
















