キリスト教一致祈祷週間 「神が何を求めておられるか」 インドのダリットに光当てる 2013年2月2日
キリスト教一致祈祷週間の1月18~25日、全国各地でカトリックとプロテスタントの教会による合同の集会が行われた。46回目となる今年のテーマは「神が何をわたしたちに求めておられるか」。インドの教会とダリット(サンスクリット語で「困窮した人々」「抑圧されている人々」の意)の社会に光を当てたものとなった。
1月20日には、カトリック赤堤教会(東京都世田谷区)で世田谷地区一致祈祷会(準備委員代表・松本敏之氏=日基教団経堂緑岡教会牧師)が行われ、約230人が出席した。日本キリスト教協議会(NCC)とカトリック中央協議会が作成した小冊子をもとに、世田谷地区独自の式文を作り、東日本大震災で被災した人々を心に留める祈りを挿入した。
祈祷会は、ジャン・シャール・ロワゼール氏(カトリック赤堤教会主任司祭)の司式のもと、同地区に属する19の教会・団体からの出席者が、賛美、聖書朗読、祈祷を分担した。献金は、東日本大震災と福島原発事故により東京に避難している避難世帯の支援活動を行っている「きらきら星ネット」を通して被災者支援のためにささげられた。
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式文の中の「言葉の典礼」には、ダリット社会のサラという女性の信仰の証しが記されている。家を焼かれたサラは子どもたちや近所の人々とともに祈り、「わたしは死んでも、キリスト者であることをやめません」と言う。小冊子によるとこの証しは、2008年にインドのオリッサ州カンダマルで、キリスト者がヒンドゥー教過激派によって1カ月にわたり暴行を受けた事件を背景としている。暴行の結果、59人が死亡、115のキリスト教会が破壊された他、多数の家屋が損害を受け、5万人のキリスト者が、森や難民キャンプに避難した。
高橋顕氏(日本聖公会東京聖三一教会・東京聖十字教会牧師)=写真下=は説教の中で、この証しに言及し、「ダリットの悲惨な苦しみと悲しみと、想像を絶する差別の出来事が証しされている」と述べ、「今も悲惨な状況が続いている中にあっても、世界中のキリスト者が一緒に歩んでいこう、共に生きていこうと願いながら、今日わたしたちは心を合わせている」と強調した。
今年のキリスト教一致祈祷週間の冊子の草案は、インド学生キリスト者運動(SCMI)が運動100年を記念して、全インド・カトリック大学連盟(AICUF)とインド教会協議会(NCCI)と相談しつつ作成。作成されたテキストは、世界教会協議会信仰職制委員会と教皇庁キリスト教一致推進評議会が任命した国際委員会のメンバーによって最終的にまとめられた。日本語版小冊子は、日本キリスト教協議会信仰と職制委員会とカトリック中央協議会エキュメニズム部門の共同作業によりまとめられた。
同小冊子によると、2001年のインドのキリスト者人口は約2400万人で、インドの総人口12 億人の約2・3%を占める。インドのキリスト者の約80%がダリット出身者だと言われている。
ダリットの社会はカースト制の中では最も不浄かつ他を汚すものと考えられ、カースト制の外に位置付けられ、かつては不可触民と呼ばれたという。小冊子では、「インドとその教会におけるダリットに対する非常に大きな不正が行われている状況において、目に見える一致を求めることは、カースト制度の廃止ということ、そして最も貧しい人々によるこの一致への直接の参加ということ抜きにはありえないという結論に達しました」と述べられ、「今年の一致祈祷週間において、ダリットと共に歩むこと、正義を求めるすべての人と共に歩むことが、キリスト者の一致のための祈りの不可欠な部分となります」と呼びかけている。