「聴く」営みが紡ぐ共同体のリアル 映画『聴く隣人のいるところ』トークショー 2026年5月27日

 島根県にある全寮制のキリスト教愛真高等学校に密着したドキュメンタリー映画『聴く隣人のいるところ』の試写会が東京、名古屋、大阪の3会場で開催され、上映後に出演者や卒業生、保護者らを交えてトークショーも行われた。

 5月16日に日本基督教団名古屋教会(名古屋市中区)で行われた回では、出演した卒業生のほか、保護者で、日本キリスト改革派関キリスト教会牧師の橋谷英徳さん、本作を手がけた早川嗣監督が登壇。それぞれの立場から、作品に込めた思いや共同生活のリアルについて語り合った。

 撮影に至る動機について早川監督は、「卒業から約20年が経って母校を訪れた際、生徒たちが自分の内面を語り、周囲がそれを真剣に受け止める姿に強い衝撃を受けた。人間関係が希薄化する現代において、逃げ場のない環境で他者と向き合い『聴く』という営みが残されていることを、記録として残したかった」と振り返った。ありのままの自然な人間関係を映し出すため、カメラの存在がプレッシャーにならないよう配慮しながら撮影を進めたという。

 実際に被写体としての日々を過ごした卒業生は、「人間関係の密度が高いため、ぶつかり合うことも多かったが、そのしんどさを通してしか得られない経験があった」と回顧。「(礼拝形式の)『夕会』を通して、互いの弱さを受け入れ、耳を傾ける姿勢が自然と育まれていった」と、3年間の共同生活を通して生じた内面的な変化を率直に語った。

 保護者の立場から登壇した橋谷氏は、「遠く離れた環境に送り出す不安もあったが、子どもたちが劇的に変わっていく姿を見守ることができた」と述懐。さらに牧師の視点から、「信仰を強制するのではなく、日常の泥臭い対話の中にこそキリスト教の精神が息づいている。他者の声に耳を澄ます『聴く隣人』としてのあり方は、現代の教会や社会全体にも通じる普遍的で重要なメッセージ」と作品の意義を評価した。

 参加した教会関係者からも、「単なる学校紹介映画にとどまらず、『しんどい』思いをしながらも、他者とどう向き合い、共に生きるかという根源的な問いを投げかける作品」との感想が聞かれた。

 同作は6月6日より、ポレポレ東中野をはじめ全国30館以上での公開が決まっている。詳しくは公式サイト(https://kikurinjin.com/)参照。

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