米保守派教会も「キリスト教ナショナリズム」検証へ 国家と信仰の混同に警戒 2026年8月3日

米国のプロテスタント諸教派が今夏の総会で、キリスト教ナショナリズムを神学的・牧会的に検討する委員会を相次いで設置している。政治運動への賛否にとどまらず、キリスト教信仰と国家的アイデンティティーの混同が、教会の宣教や人種・民族間の関係に及ぼす影響を検証する動きだ。米誌「クリスチャニティ・トゥデイ」が7月30日付で報じた。
北米キリスト改革派教会(CRC)は6月の総会で、キリスト教ナショナリズムに関する研究委員会の設置を93対84で可決した。委員会は、用語の定義、北米社会で支持を集める背景、歴史上の類例、改革派の教理との関係を検討し、教会に向けた牧会的指針を2028年の総会に提出する。総会はこれに先立ち、教会と国家の領域を混同する考えを退けることも確認した。
一方、議論では「意味が広すぎて定義できない」「文化に現れる流行語すべてに教派が対応すべきではない」との反対意見も出た。賛成した代議員は、愛国心そのものを否定するのではなく、国家や民族への忠誠が福音に代わる究極的な価値となる危険を見極める必要があると訴えた。
保守的な長老派教団である米国長老教会(PCA)は、2025年に設けた暫定委員会の中間報告を今年の総会で受け、調査をさらに1年間継続することを決めた。35ページの報告書は、キリスト者が政治や市民生活に責任をもって参加すること自体は肯定しつつ、教会と国家には異なる使命があり、国家がキリストによる救いの働きを代替することはできないとした。
報告書はまた、キリスト教ナショナリストを自称する一部の人々が用いる侮蔑的で攻撃的な言葉を批判。反ユダヤ主義や「人種リアリズム」、自らの血縁・民族集団を優先する「キニズム」と結び付いた主張について、聖書的キリスト教とは相いれないと警告した。
正統長老教会(OPC)も6月、教会と国家の関係を聖書と信仰告白に照らして検討する5人の特別委員会を設置した。委員会は、キリスト教ナショナリズムと呼ばれる教えに特に注意を払い、教職者や信徒の理解を助ける声明をまとめる。同総会は、人種や民族的属性による優越性を唱える神学的・政治的主張を非難する決議も採択した。
ルーテル教会ミズーリ・シノッド(LCMS)も7月の総会で、人種差別、反ユダヤ主義、キリスト教ナショナリズムなどの政治的・社会的問題を検討する委員会の設置を決めた。南部バプテスト連盟(SBC)はキリスト教ナショナリズムを直接議題とはしなかったが、移民に関する決議の中で、自民族中心主義、人種・民族への敵意、民族ナショナリズム、差別を退けた。同時に、国境管理や法執行の必要性も肯定しており、保守派教会内部の立場が単純な賛否に分けられないことを示している。
日本でも今年5月、森本あんり氏(東京女子大学前学長、国際基督教大学名誉教授)と渡辺靖氏(慶應義塾大学教授)による対談『キリスト教ナショナリズム 不穏なアメリカの変貌』(朝日新書)が刊行された。同書は、キリスト教ナショナリズムの定義や過激化、Z世代、リバタリアニズム、イスラエルとの関係、民主主義の危機などを取り上げ、神学と現代アメリカ研究の両面から背景を読み解いている。














