「地球をまるごと故郷に」 旅して出会って異文化を知る ポッドキャストと写真で発信「地球地元化計画展」 2026年8月10日

東京・神楽坂のにぎわいから一本、路地へ入る。TOKICAFE神楽坂(東京都新宿区)の1階にある小さなポップアップスペースで、壁一面にメキシコ、インド、ポーランド、チェコ、イギリス、ルワンダで撮られた写真が並ぶ。
8月8日から11日に開かれている「耳から目から『地球地元化計画展』」。企画したのは、ポッドキャスターで宗教文化士のトキニさん。約5年前から音声メディアのポッドキャスト番組「耳で旅する海外ラジオ『地球地元化計画』」を配信し、自ら訪れた国々の街角や人々、文化をひとり語りで伝えてきた。今回は写真にキャプションを添え、オーディオガイドとも連動させて「耳で旅する」番組を、「目から」も味わえる展示へと昇華した。
旅をすると宗教に行き着く
これまで訪れた国は20カ国以上。小学生のころ父親に連れて行ってもらった韓国を皮切りに、高校進学後は一人でも海外へ出るようになった。学生時代には格安航空を駆使し、東南アジアを中心にバックパッカーとして旅を重ねた。前職では海運業に携わり、航海士の資格も取得している。最近ではその経験を生かし、桃山商事の森田雄飛さんと「実録 あしぬけ海運ラジオ」も始めた。
現在は会社員として働き、大学院でも宗教学を学びながら、休みを見つけては海外へ飛び、写真を撮り、マイクを握る。どれが本業でどれが趣味なのか、その境目は限りなくあいまいだ。ポッドキャストから直接の収益はない。ただ好きだからやる。旅行のためなら多少の犠牲は惜しまない。
旅のスタイルも確立している。荷物は基本的にリュック一つと必携書の『地球の歩き方』。旅行用品はほぼ常時パッキング済みで、「明日、旅立つ」と言われても、服を入れれば出発できる態勢を維持する。荷物が多いと動きが鈍くなるので、着替えも最低限しか持参しない。旅の行程はほとんど一人。現地で友人と会ったり、その場で人に話しかけて仲良くなったりする。
そんな旅が、宗教を学ぶ入り口にもなった。大学で国際系の学部に進んだことから、海外の友人が増えた。彼らは自らの宗教や信仰についてごく自然に語るのに、日本について尋ねられるとうまく説明できない。「無宗教」と答えると、海外の友人から「どうやって生きているの?」と驚かれる。初詣に行き、寺社を訪ね、クリスマスを祝いながら、自らを「無宗教」と標榜する日本人とは何なのか。「外国の友だちに説明したい」との思いが、宗教を学び始めるきっかけになった。
「海外旅行で訪ねる場所のほとんどは宗教施設。旅行が楽しいというより、異文化が好きなんです」
メキシコのテオティワカン遺跡、ヨーロッパの教会、インドのモスクやヒンドゥー寺院、プラハのシナゴーグ。日本でも清水寺や神社は観光の定番だ。宗教施設を巡るつもりがなくても、土地の歴史や文化をたどれば宗教に行き着く。世界を面白がっていたら、宗教にたどり着いた。宗教文化士という資格も、宗教という入口から世界を見る解像度を少し高くするためのツールの一つ。

世界は巨大なテーマパーク
「地球をまるごと故郷だと思えるようになってほしい」
その思いは、戦争や分断、排外的な言説が目立つ昨今、ますます切実になっている。イスラエルや韓国、ミャンマーなど、各地に友人がいるトキニさんが、海外のニュースに触れるたび、まず思い浮かべるのは「国」ではなくそこで暮らす一人ひとりの顔だ。
「中国人が~」とか「アメリカ人だから~」と国籍や民族を一つのイメージでくくれば、目の前にいるはずの人間が見えなくなる。宗教についても同じだ。ある宗教の信者が全員テロリストなわけがない。
旅先で現地の人々に助けられた経験は数知れず。「本当に泣いちゃうぐらい、みんな親切」との言葉には実感がこもる。国家間の戦争を、一人のポッドキャスターが止められるわけではない。それでも、分断する言葉に「流されない」ことはできる。そのために、知らない土地を知り、そこで生きる人の声や表情に触れる。
世界地図とディズニーランドの見取り図を重ねるたとえ話は秀逸だ。日本は、ディズニーランドで言えば一つの土産物店ほどの規模でしかない。その店の中だけでも十分楽しめるが、少し足を伸ばせば、まだ知らないアトラクションが無数にある。
「すぐ近くに『ビッグサンダー・マウンテン』があるよって教えてあげたい」
旅は、「普通」だと思っていた自分の生活を、数ある選択肢の一つとして眺め直す機会にもなる。会社へ行くことも、学校へ行くことも、満員電車に乗ることも、世界全体から見れば決して唯一の生き方ではない。旅をして世界を広げれば、「ここ」しかないと思い詰めることもなくて済む。
今後は写真展をより大きな規模で開き、トークイベントにも挑戦したいとトキニさん。文章を書くことは苦手だが、自らの旅や活動を書籍化したいという夢も描く。
夏の日差しが照り付ける街の一角に、巨大な「テーマパーク」へと通じる扉が開いた〝束の間〟の4日間。地球をみんなの「地元」にする。その試みは、まだ始まったばかり。















