AI時代に言葉と沈黙を問う 古舘伊知郎氏が立教大で特別授業 2026年8月10日

立教大学(西原廉太総長)は6月18日、同大卒業生の古舘伊知郎氏(同大経済学部客員教授)による「特別授業&トークセッション」を池袋キャンパスで開催した。全学共通科目「現代社会における言葉の持つ意味」のスピンオフ企画。生成AIが文章や言葉を生み出す時代に、人間が自ら考え、語ることの意味から、言葉を離れた沈黙や観想の意義まで議論が広がった。同大は8月7日にダイジェスト動画も公開した。
古舘氏は2019年から同大で「現代社会における言葉の持つ意味」を担当している。2026年度の授業の副題は「言葉を持った時、人間に悲しみが生まれた」。シラバスでは、言葉が人間にもたらした豊かさと同時に、「決めつけ」や「ミスリーディング」を生む側面も取り上げ、今年度はできるだけ教壇を降り、学生と直接対話する授業を「人間とAIの向き合いに対する、ささやかな抵抗」と位置付けている。
第1部の特別授業で古舘氏は、アナウンサーとして培ってきた経験を振り返りながら、言語の起源やソシュールの言語学、チョムスキーの「普遍文法」、仏教の「空」の思想などを手掛かりに、言葉そのものの本質を考察した。若者が使う新しい表現にも触れ、時代とともに変化する言葉を「言葉は民主主義の森」と表現した。
生成AIをめぐっては、昨今の「生成AI丸写しのレポート」への危機感から、今年度は成績評価をレポートから筆記試験に変更したと説明。「筆記テストでは、拙い文章でいいから、情熱を持って自分の肉筆で書いてほしい」と学生に伝えているという。一方でAIそのものを否定するのではなく、その台頭には抗えないとした上で、AIによって人間が資本や労働の抑圧から解放されれば、「何のために生き、どう死ぬか」という本来的な哲学的思考に向き合う時が来るかもしれないとの見方を示した。
第2部には、同じく同大卒業生でフリーアナウンサーの宇賀なつみ氏と同大総長の西原氏が加わった。聴講者から「饒舌であることと、本当のことを伝えることのはざまをどう歩むか」と問われると、宇賀氏は、うまく話そうとすることでかえって伝わらなくなることもあるとし、「『何を言うか』と同じくらい『何を言わないか』も大事」と応じた。
西原氏は、池袋キャンパス正門近くの回廊に修道院建築の伝統が残されていることに言及。修道士たちが沈黙の中を歩きながら真理を探究した歴史を紹介し、言葉を介在させずに真理とつながろうとする「メディテーション・観想(黙想)」の重要性を説いた。
立教学院では今後も、各界で活躍する卒業生とのつながりを生かした企画を予定している。9月26日~11月8日には、卒業生で漫画家の西岸良平氏による「西岸良平 × 立教学院 企画展」を池袋キャンパスで開催。代表作『三丁目の夕日』『鎌倉ものがたり』の複製原画や愛用品、在学中に創設に携わった立教大学漫画研究会の資料などを展示する。入場無料。














