ネパール大洪水 死者389人に 教会2カ所流失の情報 日本のNGOも支援開始 2026年8月28日

 ネパール北部の中国・チベット自治区との国境付近で8月26日に発生した大規模な鉄砲水と土石流で、ネパール警察は27日夜までに389人の死亡を確認した。多数の住民や外国人旅行者の行方が分からないままで、世界福音同盟(WEA)は被害の大きいラスワ郡ティムレで教会2カ所が流されたとの現地報告を公表。カトリック教会や福音派諸教会、日本のNGOも相次いで救援や被害調査に乗り出している。

 ネパールのオンラインメディア「Nepal News」によると、ネパール警察が27日午後9時にまとめた災害状況報告では、ボテ・コシ川から下流域にかけて8郡で計389人の遺体を収容した。チトワン郡で137人、ナワルパラシ東部で87人、ダディン郡で33人、ゴルカ郡で32人、ヌワコット、タナフン両郡で各28人、ナワルパラシ西部で27人、ラスワ郡で17人の死亡が確認されている。警察官28人もなお行方不明という。

 ネパール外務省が27日午後8時時点で公表した資料では、33カ国の外国人596人が行方不明。この中には日本人5人、インド人167人、米国人66人、ウクライナ人53人、マレーシア人51人、英国人33人などが含まれる。数字は捜索の進展に伴って変動している。日本外務省も5人の安否を確認中で、在ネパール日本大使館に現地対策本部を設置。緊急対応チーム(ERT)要員の派遣を指示し、ネパール政府に捜索・救助への協力を求めている。

 国際機関も被害規模の拡大を警告している。国連児童基金(ユニセフ)は27日、ラスワ、ヌワコット、ダディン3郡だけで少なくとも1万7千人の子どもが緊急人道支援を必要としていると発表。衛生用品や医療用テント、新生児用品、栄養治療食などの輸送を始め、保護者と離ればなれになった子どもの身元確認や家族との再会支援、心理社会的ケアにも着手している。

 WEAが27日に公表した現地教会関係者からの報告によると、ラスワ郡ティムレには6教会があったとされ、そのうち2教会が洪水に流された。教会側からは「信徒125人以上が死亡した」との情報も寄せられているが、WEAは当局による確認を待っている段階だとしており、被害の全容は判明していない。

 ネパール全国キリスト教フェローシップ(NCFN)とネパール・クリスチャン・ソサエティー(NCS)はカトマンズから複数のチームを派遣。道路が寸断されているため、3チームがオートバイで山間部へ向かい、医療支援が可能な救助チームも活動を始めた。WEAによると、地域の牧師らは自身の教会や家族が被災する中、残った建物を住民に開放している。救援は宗教を問わず、食料、安全な飲料水、避難場所、生活必需品、医療などを提供する方針。WEAも世界の教会に祈りと募金を呼びかけた。

 カトリック教会も被害調査を進めている。ネパール使徒座代理区のシラス・クリシュナ・ボガティ使徒座管理者によると、被災地域に暮らすカトリック信徒25世帯の安全は確認された。一方、ミサのため川の対岸へ渡ったジェームズ・ブリット司祭は、道路と橋が流されたため任地へ戻れない状態になったという。カリタス・ネパールの緊急対応チームも現地入りを試みているが、27日の段階ではヌワコット郡までしかアクセスできず、特に被害の大きいラスワ郡は孤立した地域が多い。教会は被害状況を確認した上で、世界のカリタス・ネットワークに支援を要請する方針。

 教皇レオ14世は27日、ピエトロ・パロリン国務長官名で弔電を送り、多数の犠牲者と広範な被害に「深い悲しみ」を表明した。遺族への哀悼と被災者への「霊的な寄り添い」を伝え、捜索・救助にあたる緊急要員のために祈った。

 日本国内でも支援の動きが始まった。認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは27日、緊急支援募金を開始。現地法人グッドネーバーズ・ネパールは、被災した5世帯への一時避難場所の支援、15世帯への調理器具、35世帯への衛生キットの配布をすでに始め、緊急支援チームを被災地へ派遣した。同団体では現地スタッフの家族2人が犠牲になったという。

 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会もネパール事務所を通じて情報収集と募金を開始した。被害が確認されている学校は少なくとも15校に上り、中には児童の半数が行方不明になっている学校もあるという。被災地域には同団体が教育・緊急人道支援を続けてきたヌワコット、ラスワ両郡が含まれる。

 ピースウィンズ・ジャパンは初動調査チームの派遣を決定し、被害状況や支援ニーズを調査する。ジャパン・プラットフォーム(JPF)も加盟NGOや関係機関と情報収集を進め、必要に応じて支援の実施を検討するとしている。

 今回の災害について当初は地震が引き金になった可能性も報じられたが、米地質調査所(USGS)は、観測された揺れは地震ではなく、大量の氷と岩石が崩落した際に生じた地震波だったとの分析を示した。ロイターによると、高地で起きた氷雪・岩石の崩落が大量の堆積物を巻き込みながら川へ流れ込み、高速の土石流と鉄砲水になったとみられている。

 専門家は、今回の崩落を直ちに気候変動だけに起因すると断定することには慎重な一方、気温上昇や氷河融解が高山地帯の岩石や氷を不安定化させ、大規模崩落が起きやすい条件をつくっている可能性を指摘する。さらにボテ・コシ川周辺では土砂による天然ダムと湖が形成され、水位上昇による再決壊の危険もあり、当局は下流域で二次災害への警戒を続けている。

 ネパール政府は現在、国外からの救助隊については自国の治安・救助機関で対応可能として受け入れを見合わせる一方、救援資金や物資などの国際協力を募っている。道路や橋が各地で寸断され、被災地へのアクセスが難しい中、教会、NGO、国際機関による緊急支援がどこまで孤立地域に届くかが今後の焦点となる。

写真=8月26日、ギーロン港を襲う土石流。固定CCTV映像からの静止画(撮影者不詳/Wikimedia Commons、Public Domain)

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