カトリックいのち・平和・人権委員会 米のICC制裁撤回を政府に要請 赤根智子所長への措置「由々しい事態」 2026年9月5日

 日本カトリックいのち・平和・人権委員会(委員長=森山信三司教)は9月4日、米トランプ政権が国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長=写真=らに科した制裁について、高市早苗首相に対し、米政府へ撤回を直接申し入れるよう求める要望書を発表した。日本政府に「米国の圧力に屈することなく」ICCへの支持と支援を明確にするよう訴えている。カトリック中央協議会が同日公開した。

 米政府は8月18日、赤根氏とセネガル出身のアブドゥライェ・セエ上級法廷弁護士を新たな制裁対象に指定した。マルコ・ルビオ国務長官は、ICCが米国やイスラエルなど、裁判所の管轄権に同意していない国の当局者らを捜査、逮捕、訴追しようとしていると批判。ICCを「腐敗し、致命的に政治化された超国家的裁判所」と位置付け、国家主権への「攻撃」を容認しないとの立場を示した。制裁により、米国の管轄下にある資産の凍結や米国の金融システムを利用した取引の制限などが生じる。

 これに対し同委員会は、ICC職員は国際法に基づいて捜査や裁判を担っており、制裁を受ける理由はないと主張。トランプ政権がICC加盟国にも脱退を促しているとして、「大変由々しい事態」と批判した。ICCについて、各国の裁判制度を補完しながら人道に対する罪や戦争犯罪などを犯した個人の責任を問う機関だとし、「人権と法の支配」を追求する点でカトリック教会と使命を共有するとした。

 ICCをめぐる米政権との対立の背景には、ガザでの戦闘がある。ICCは2024年11月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント前国防相について、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を発付した。イスラエル側は管轄権を認めず、容疑も否定している。

 米国とイスラエルはいずれもICC設立条約のローマ規程に加盟していない。一方、パレスチナは2015年に加盟しており、ICCはガザとヨルダン川西岸、東エルサレムを含むパレスチナ領域で行われた対象犯罪について、容疑者の国籍にかかわらず管轄権を持つとの立場を取っている。ここに、非加盟国の国民を裁くことは主権侵害だとする米・イスラエル側との根本的な対立がある。

 ICCは今回の制裁を、司法機関の独立に対する「あからさまな攻撃」と非難。8月19日の声明によると、この時点で18人の判事のうち9人、2人の次席検察官、前検察官、職員1人が米国の制裁対象となっている。

 日本は2007年にローマ規程へ加盟し、現在はICC最大の資金拠出国。外務省は赤根氏への制裁発表翌日の8月19日、「今回の措置はたいへん残念」とする談話を発表し、ICCを一貫して支持する姿勢を示した。

 高市首相は25日、日本政府の対応が「弱腰」との批判に対し、米国へ制裁対象としないよう発表直前まで働きかけていたと説明。赤根氏が制裁を受けた場合に備え、金融取引に支障が生じないよう支援してきたことも明らかにし、米国の措置は「日本の立場と相容れるものではない」と述べた。一方、米政府に制裁撤回を直接要求するかについては明言しなかった。

 国内では対応強化を求める声も広がる。人権外交を超党派で考える議員連盟は8月、制裁への抗議と即時撤回要求などを政府に要請。9月4日には同議連共同会長の中谷元・前防衛相も「覚悟をもってICCと赤根所長を守らなければならない」として、高市首相に米国への抗議と撤回要請を求めた。

 今回の要望を出した「いのち・平和・人権委員会」は今年4月、正義と平和協議会、難民移住移動者委員会、部落差別人権委員会などを統合して発足。戦争、難民、差別、貧困などを相互に関連する課題として扱うことを掲げており、今回の声明も、国際刑事司法を教会の人権・平和への取り組みと結び付けた形となった。

© European Union, 1998 – 2026, Attribution, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=162468331による

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