米国防総省に「宗教局」新設 兵士の「霊的即応性」を重視 2026年10月2日

米国のピート・ヘグセス国防長官は9月30日、軍人への宗教的支援を強化するため、国防総省に「宗教局(Office of Religious Affairs=ORA)」を新設すると発表した。兵士の「霊的な健康」を身体的な健康と同じ水準で重視し、「霊的即応性」や「霊的回復力」を支援・評価する研究や技術、分析手法も扱う。「レリジョン・ニュース・サービス」(RNS)などが報じた。
ヘグセス氏はバージニア州クアンティコ海兵隊基地で行った演説で新設を発表した。宗教局と局長は国防長官に直接報告し、局長は国防総省全体の宗教問題について長官と副長官に助言する。従来の従軍チャプレン制度を置き換えるものではなく、各軍のチャプレンが引き続き宗教的支援の中心を担う。新組織はその予算や人員、施設などを確保し、政策を横断的に調整する役割を持つ。
国防総省の設置文書によると、宗教局は「霊的健全性、霊的即応性、霊的回復力」を支援・評価するための研究、技術、分析手法を監督する。また、これまで各軍のチャプレン組織を調整してきた米軍チャプレン委員会(Armed Forces Chaplains Board)も新局の下に置かれる。60日以内に2027会計年度に向けた当初予算案をまとめ、90日以内には不足している宗教関連予算や人員、設備などを調査する。
ヘグセス氏は演説で、これまで軍内部ではチャプレンが官僚的な手続きによって十分な役割を果たせなかったと主張。「霊的な健康を身体的な健康と同じ水準に置く」と述べた。また、新組織には実質的な権限を持たせ、宗教活動に必要な予算や施設を確保するとした。
一方、設置文書は、宗教局の創設について「宗教への参加を強制するものでも、いかなる信仰を持つ、あるいは信仰を持たない軍人、文民職員、家族の宗教の自由を損なうものでもない」と明記している。
新組織をめぐっては評価が分かれている。米聖公会で軍・連邦機関を担当するアン・リトニア補佐主教はRNSに対し、予算不足にあるチャプレン活動への支援強化には期待を示す一方、宗教局が各軍の指揮系統を越えて長官に直接つながる仕組みについて、既存のチャプレン組織との権限関係が不明確になる可能性を指摘した。
これに対し、福音派指導者のフランクリン・グラハム氏は、軍人の霊的ケアを担うチャプレンの重要性を挙げ、新組織を支持した。一方、政教分離を擁護する団体「Americans United for Separation of Church and State」などは、特定の宗教的立場が軍に持ち込まれることへの懸念を表明している。
米軍では陸海空軍などに古くから従軍チャプレン制度があり、キリスト教だけでなくユダヤ教、イスラム教、仏教など多様な宗教の軍人を支援してきた。今回の宗教局新設は、個々の軍人への宗教的ケアにとどまらず、「霊的即応性」を国防総省全体の組織課題として位置付ける点が特徴となる。
















