「正解ではなく決断と責任を」 『新クリスチャンの職業選択』出版記念会 山﨑龍一氏と学生らが発言 2026年10月6日

「就職活動で重要なのは自己実現からの決別」――。山﨑龍一氏の『新クリスチャンの職業選択 就活するクリスチャンが最初に読む本』(いのちのことば社)の出版記念トークイベントが10月6日、東京・御茶ノ水のお茶の水クリスチャン・センターで開かれ、オンラインを含め50人を超える参加者が集った。キリスト者学生会(KGK)とMA-netの共催。KGK主事である山形宣洋氏の司会のもと、山﨑氏による講演のほか、同書に証しを寄せた社会人や現役学生による座談会、Q&Aが行われた。
同書は、ロングセラー『クリスチャンの職業選択』を20年以上を経て改訂した新版。一般的な就職活動のノウハウではなく、聖書に照らして「働く意味」を問い、キリスト者として社会でどう生きるかを考えることを主眼とする。
山﨑氏によると、本書の原型は1990年代、KGKで大学生らと「卒業までに何を学ぶべきか」を考えたことにさかのぼる。そこで挙げられたのが、キリスト教的世界観に基づく職業・労働観、恋愛・結婚観、アイデンティティー、教会論、国家・戦争・貧困など社会の問題という五つのテーマだった。その最初のテーマ「進路選択」を扱った合宿での説教原稿が本書のもとになったという。山﨑氏は「就職指南の本ではない」と強調し、「生涯にわたって人生の土台を築くための五つのうちのファーストステップ」と位置づけた。
講演で繰り返し語ったのは、「私」を主語にしない職業選択。「神様が皆さんに何をしてほしいと願っているか」というところから始めなければ、就職でも恋愛でも、何かにぶつかった時に心が折れてしまうと山﨑氏。「神様が遣わしてくださった私が働く」と視点を変えれば、困難は「乗り越える一つの課題」として見えてくるという。
本書についても「就職のための本ではなく、キリスト者として筋を通して生きることへの入門書」と説明。学生時代に職業や結婚といった現実的な問題と向き合うこと自体が、社会の価値観に流されず「現実的な信仰」を身につけるレッスンになるとした。

(左から)司会の山形氏と著者の山﨑氏
後半の座談会では、訪問看護師や牧師として働く卒業生と、進路を決めた、あるいは模索している大学生3人が、それぞれの職業選択を振り返った。
来年度から教員になる学生の一人は、当初強く希望していた私立学校から不採用を告げられた経験を紹介した。学校側から期待を寄せられていたこともあり、自分の希望をいつしか「神のみ心」と重ね合わせていたが、不合格によって大きな挫折を経験したという。その後、公立学校の教員採用試験に挑み、現在の進路へとつながった。
訪問看護に携わる卒業生は、進路や転職について「こうすればすっきりするというノウハウは絶対ない」と話した。祈り、家族や教会、友人に相談し、時には一歩踏み出してみる。たとえ後から早まった決断だったと思っても、その経験を通して再び自分と神の示す道を探っていく。その繰り返しだと証しした。
Q&Aでは、現代の就活で重視されがちな「好きなこと」「自己分析」「適職」といった考え方そのものにも問いが向けられた。山﨑氏は「好きなことが見つからないから働かないという選択肢はクリスチャンにはない」と応じ、社会や人に仕える分野の中から、自分が忍耐強く努力を続けられる仕事を考えるべきだとした。
MBTIやストレングスファインダーなど自己分析ツールについて尋ねられると、「長い間真剣に働くことを考えたら、若い時の自己分析はほぼ役に立たない」と断言。不得意なことは人に助けてもらえばよく、「助けてもらえる人格」であることの方が大切だと述べた。
また、「真にキリスト者として組織に貢献する生き方をするために問われるのは責任。若い時には結論を急ぎたくなるが、仕事や組織には正解はなく、あるのは決断と責任だけ」とし、神のみ心は職業や選択肢ではなく、生き方、決断、責任の取り方にあると指摘。何を選ぶかだけにみ心を求めるのではなく、自分がどう生き、神と人にどう仕えるかという人格の中に問いを置くよう呼びかけた。
山﨑氏が主宰するMA-net(Ministry Administration Network)は、教会や宣教団体の事務・管理・運営をキリスト教的世界観から捉え直し、組織を支える実務者同士のつながりや課題解決を支援するネットワーク。会計・財務・税務・法務など、一見すると「実務」の問題に見える課題も宣教や教会形成に関わるものとして考え、ガバナンスやマネジメント、実務者の交流・情報交換、専門家との連携などに取り組んでいる。活動や山﨑氏による発信はnote(https://note.com/ma_net)などで紹介されている。

















