フランス各地で暴動 教会が暴力の連鎖を非難 パリ大司教「平和の担い手に」 2026年10月21日

フランス各地で10月17~18日、物価高騰や公共サービスの悪化に抗議する大規模なデモの一部が暴徒化し、商店の略奪や公共施設への放火、警察との衝突が相次いだ。パリ大司教のローラン・ユルリック氏=写真=は19日、声明を発表し、暴力行為を厳しく非難するとともに、カトリック信徒に対し、慰めと平和、相互理解の担い手となるよう呼びかけた。フランス司教協議会やプロテスタント教会関係者からも、暴力の連鎖を断ち、対話と社会的正義を回復するよう求める声が上がっている。
抗議行動は9月中旬、教員不足や学校施設の老朽化などに不満を抱く高校生らの運動から始まり、大学生や労働組合、生活費の高騰に苦しむ市民らを巻き込んで全国に拡大した。17日のデモには、政府発表で約55万人、労働組合側の推計で約80万人が参加。大多数は平和的に行進したが、一部が暴徒化し、パリ、マルセイユ、リヨンなどで略奪や放火が発生した。中部リモージュでは歴史的な市庁舎が火災で大きな被害を受けた。18日までに少なくとも2400人が逮捕された。
フランス司教協議会(CEF=ジャンマルク・アヴェリン会長、マルセイユ大司教)は19日、会長と副会長2人の連名で声明を発表。警察官や商店主など被害者への連帯を表明し、暴力と破壊行為が社会に恐怖と絶望をもたらしたと指摘した。
声明は、暴力の背景にある社会的危機の根本原因を問う必要性にも言及。暴力の連鎖に巻き込まれないよう訴えるとともに、正当な要求が受け止められ、対話と正義の尊重を通じて平和が回復されるよう祈るとした。
ユルリック大司教は同日の声明で、パリが暴力によって「変わり果てた姿になった」と嘆いた。特に、将来を案じる若者たちの正当な不安や要求が、激しい衝突や略奪によって見えなくなり、その声が届かなくなっていることを問題視した。
同大司教は、9月25~28日に教皇レオ14世を喜びと調和のうちに迎えたパリが、1カ月も経たないうちに暴力の舞台になったことへの衝撃も表明。負傷した警察官や消防士、生活の糧を奪われた商店主、外出を恐れる住民らに寄り添う姿勢を示し、いかなる理由があっても無差別な暴力は正当化されないと強調した。その上で、カトリック信徒には希望を証しし、公正で兄弟愛に満ちた社会の建設に携わることを求めた。
マルセイユのアヴェリン大司教も18日、地元で商店の略奪に加えて教会への侵入や市庁舎への襲撃があったことを報告し、被害者への連帯を表明した。リヨンのオリビエ・ド・ジェルメ大司教は、暴力は社会の危機を反映しているものの、さらなる不正義と分断を招く行き詰まりであり、対立ではなく協力によって課題に向き合うべきだと訴えた。同市では17日、キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒が参加を予定していた平和行進が、治安上の理由から延期された。
司教協議会の副会長を務めるヴァンサン・ジョルディ・トゥール大司教は、バチカン・ニュースの取材に対し、若者の不安や要求には正当なものがあると指摘。戦争や環境問題、経済的困窮などが将来への不安を強めているとの認識を示した。社会の共通善を見失わないためにも、労働組合や市民団体などを通じた民主的な対話の再構築が必要だと訴えた。
一方、ルター派や改革派などの教会が加盟する欧州プロテスタント教会共同体(CPCE)は20日、パリのプロテスタント教会に所属するサンドリーヌ・モロー牧師が執筆した祈り「誰も排除しない社会的平和のために」を公式サイトで公開した。
祈りは、デモで負傷した若者や警察官、商売を失った人々の苦しみに言及するとともに、平和的なデモや民主主義を学ぶ学生たちの議論が、暴力的な映像に比べて十分に報じられていない現状を指摘。社会が若者の声に十分耳を傾けず、教育への投資を怠ってきたことへの反省を表明した。さらに、社会から排除された人々に近づき、暴力を和らげようとしたキリストの姿を模範とするよう呼び掛けた。
教皇レオ14世は、今回の暴動に先立つ9月25日のフランス訪問で、マクロン大統領らを前に演説し、フランス共和国の理念である「自由・平等・友愛」は公共施設に掲げられた単なる言葉ではなく、普遍的な倫理的要請であると強調していた。また、社会の平和は対話と正義によって日々築かれるものだと説いていた。
By Mory Hugo - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=117402011
















