【映画短評】 彼女の気まずさはどこから 『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』 2026年2月26日

 大学卒業間近のダニエルは、母に請われて親戚の葬式(シヴァ)に参列。誰の葬式か尋ねる暇もないまま、親戚たちの不躾な質問に晒され、元恋人のマヤと苦々しく再会した挙句、パパ活相手のマイケルとばったり遭遇してしまう。しかもマイケルの妻のキムは成功した経営者。ダニエルは漫然とパパ活を繰り返すだけの、就職さえ怪しい自身の立場を自覚せずにいられない。彼女はこの突然の難局を、上手く切り抜けることができるのか。

 シヴァはユダヤ教徒が親族を亡くしたときに行う、7日間の喪の期間(天地創造の7日間との対応を思わせる)。親族や友人が訪れて故人を偲び、追悼するのがその目的だ。しかし実際には故人そっちのけで噂話に花を咲かせ、子どもの優秀さを自慢し、食べたり飲んだりして騒々しく過ごす。遺体が安置された、死が意識されるはずの室内で、しかし弔問客の関心は生にある。

 タイトルの「シヴァ・ベイビー」は、ダニエルがいわゆるパパ活女子(シュガー・ベイビー)であることのもじり。経済格差が拡大するニューヨークではシュガー・ベイビーが(その相手となるシュガー・ダディとともに)増えているという。そこまでしないと学業がままならない若者たちの選択を、安易に非難することはできない。そしてダニエルがシヴァの席で味わう気まずさも、単なる自己責任とは言い難い。

 ダニエルの気まずさは、場面に応じて顔を使い分けてきたことに由来する。親に見せる顔。恋人に見せる顔。パパ活相手に見せる顔。それらを使い分けて虚飾を飾ってきたはずが、シヴァで関係者が一堂に会してしまったことで瓦解する。嘘が発覚しそうになって更に嘘を重ねるダニエルの、そのスリルはコメディのようでもあり、またホラーのようでもある。

 「若い女性として生きることはホラー映画みたいだ」と主演のレイチェル・セノットは語る。本作でいえば、ダニエルが密かにパニック寸前の恐怖に陥っているにもかかわらず、周囲の人たちはベーグルの味に不満を並べて笑うという、誰にも気づかれない種類のホラー。しかしそのホラーな状況でプレッシャーに晒され、今も葛藤している現実の女性たちに、一時的にでも安堵感を届けたい、とエマ・セリグマン監督は語る。ダニエルの気まずさがそのための犠牲として捧げられている点も、実にユダヤ教的だ。

(ライター 河島文成)

2月27日(金)より全国公開。
配給・宣伝:SUNDAE

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